約 541,617 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2583.html
いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい 道を歩いていると、目の前にいきなり一匹のゆっくりれいむが飛び出 してきた。 「ゆっくりしていってね!」 「断る」 俺は迷わずそいつを蹴り飛ばし、そそくさと家に帰った。 れいむはゆっくりしていってねと言ったのにゆっくりしてもらえない どころか蹴り飛ばされて自分がゆっくりできなくなったので草葉の陰 で泣いた。 それから一週間。 俺はまたあの時の道を歩いていた。 すると、目の前に一匹のゆっくりれいむが飛び出してきた。 「ゆっくりまっ」 「断る」 喋っている途中のれいむの口目掛けて爪先をねじ込み、そのまま何度 か爪先を持ち上げたり勢い良く地面に振り下ろしたりしてから適当な 方向へ投げ捨てる。 れいむはゆべっとかゆ゛っゆ゛っとか呻きながら白目で口から泡など 吐いて痙攣していた。俺はそれを見届けると、れいむが通行の邪魔に ならないよう道の脇にそっとどけてそのまま家に帰ろうとする。が、 やけに足首が重いような気がして(気のせいかと思ってしばらくその まま歩いてたが、やはり重い)見てみると、まるで地面を引き摺られ てきたような哀れな姿になったれいむが靴紐に必死にしがみついてい た。 「ゆ゛……ゆ゛っぐり……ま゛っでね……」 「あ、あぁ……」 その地獄から響き渡るような声に俺はつい返事をしてしまう。 すると、れいむは急に元気に立ち上がった。 「ゆふふ……れいむはこのまえゆっくりしてくれなかったおにいさん をゆっくりさせるためにきびしいしゅぎょーをつんできたんだよ! ちからづくでゆっくりさせてあげるからかくごしてね!」 れいむはそう言って、きっとこちらを睨みつけてきた。 そして、俺は…… 「……………………………………………………………………この前?」 「どぼじでおぼえでないのー?!」 全く身に覚えがないのでとりあえず困っておいた。 れいむは泣いた。自分はずっとお兄さんの事を考えて過ごしてきたの に、お兄さんはれいむの事などどうでもよかったのだ。 お兄さんはそんなれいむを見かねて、若干申し訳なさそうな表情を浮 かべる。 「いやぁなんかスマン。全く覚えてないけど。今日は別に急いでない からゆっくりしてやってもいいぞ」 お兄さんからの提案。 ゆっくりしてないお兄さんからの完全降伏。これを受けてれいむは。 「どぼじでぞんなごどいうのー?!」 泣いた。 そしてそのまま続ける。 「それじゃせっかうのしゅぎょーがむだになっぢゃうでじょー?!」 「俺にどうしろと」 若干目的を見失っている感のあるれいむにお兄さんは言う。れいむは 器用にもみあげを動かして涙を拭うと、お兄さんを見上げて告げた。 「れいむとせいせいどーどーしょうぶしてね! れいむがかったらゆ っくりしてもらうよ!」 「……まぁ別にいいけど死んでも恨むなよ?」 所詮はただの饅頭であるれいむを労わりそう言ってきた。しかし、そ のような言葉に恐れるれいむではない。 「ゆふふ、りょうてりょうあしへしおってでもゆっくりしてもらうっ てばよ!」 「そんな状態じゃゆっくりできねーよ」 「うるさいよ! じゃあいくよ!」 そして闘いが始まった。 「ゆふふ、これがれいむのひっさつわざだよ! ぶんしんのじゅつ!」 れいむが叫ぶと、突如れいむの姿がゆっくりしてない速度で動き始め やがて残像が見えるほどになる。しかも、その残像は少しずつはっき りとした輪郭を持ち始め、とうとう元のれいむと同じ姿を持って地面 に立ったではないか。 4つに増えたれいむ達は揃って声を上げた。 「「「「これじゃどれがれいむかわからないでしょ! ゆっくりこう さんしてね!」」」」 「じゃあとりあえず一番右端から」 俺はなんとなく選んだそいつに軽くケリを入れてみる。 「ゆびぇっ?!」 そいつは潰れた饅頭のような悲鳴を上げると勢いよく後方に吹っ飛び ボールのようにぽよんぽよんと弾むと太い木にぶつかり、また潰れた 饅頭のような悲鳴を上げて止まった。 その様子を見て、残った三匹のれいむは薄笑いを浮かべて叫ぶ。 「「「ひっかかったね! そっちはほんたいだよ!」」」 「本体がやられちゃ……駄目なんじゃないか?」 そう聞くと、三匹の分身は揃って小首をかしげ、「何を言ってるんだ こいつ」みたいな顔をする。 「おにいさんのいうとおりだよ! ぶんしんははやくたたかってね!」 と、その間にずりずりと元の位置まで這ってきた本体が声を上げた。 三匹の分身は無様な本体の姿を一度見下ろし、お互いの顔を見合わせ て相談を始めた。 「だれからいく?」 「どうしよう」 「じゃあれいむがいくよ」 「いやいやここはれいむが」 「でもあえてれいむがいくよ」 「れいむがいくって」 「ぎゃくにれいむが」 「やっぱりれいむが」 誰かが声を上げると他の誰かが志願し、それを見たほかの誰かがさら に立候補する。 いつまでも終わらない議論。それを見ていた本体は憤り声を上げた。 「なにしてるの! ぷんぷん! こうなったられいむがいくよ!」 「「「どうぞどうぞ」」」 分身たちはこれ以上ないほど息のあった声を上げた。 そして本体のれいむは不敵な笑みを浮かべながらこちらに向かって飛 びかかってきた。 「おにいさんはゆっくりしたれいむにゆっくりやられてね!」 思い切り跳ね上がるれいむ。その位置は丁度俺の右拳の延長線上。 俺は躊躇わず拳を打ち込んだ。 打ち下ろし気味の右拳は容赦なくれいむを地面に叩きつけ、スーパー ボールよろしくれいむを上空へと跳ね上げた。 およそ3メートルほど。その高さから落ちながられいむは叫ぶ。 「どぼじでごうなるのーーーぉんぶ?!」 そして顔面から地面にぶつかり、再度潰れた饅頭のような声を上げた。 戦場がしーんと静まり返る。この隙に攻撃すればもう終わりなのだが、 そういうのはオサレではないしなんだか悪い事をしてるみたいな気分 になってきたので控えておく。 しばらくして、れいむが起き上がって言った。涙を滝のように流しな がら。 「でいぶいだいのもうやだ! づぎごぞぶんじんがいっでね!」 そしてぽよんぽよんと分身たちの後ろに隠れようとする。 集まっていた分身たちはサッと別れ、三方から本体れいむを取り囲む。 「だいじょうぶ! つぎこそかてるよ!」 「もーいっかい! もーいっかい!」 「ほんたいさんのちょっといいとこみてみたーい!」 そして、見事なコンビネーションで本体れいむをおだて始めた。 「ゆ~、じゃあもういっかいだけだからね!」 「「「ゆわーい」」」 普段褒められ慣れていないれいむは棒読みくさいその言葉にあっさり と乗せられ、まだ涙の跡が残る顔をこちらに向けて跳ねてきた。 「れいむにぶんしんたちのまえでいいかっこさせてね!」 そう言って渾身の体当たりを繰り出してくる。 その姿が余りに痛々しくて、俺は右拳を入れてやらなくちゃいけない 所をつい平手でべちんと頬を引っぱたいてしまう。 「ゆべしっ!!」 横から衝撃を受けたれいむは、綺麗なきりもみ回転を疲労しつつ頭か ら地面に突き刺さった。 まさか平手でもそこまでのダメージを負うとは思わなかった俺は、上 下逆さで地面に横たわるれいむにそっと手を伸ばす。 「ごべんなざいーー! もうでいぶのまげだがらいだいごどじないで ねーーー?!」 と、それを追撃だと思い込んだれいむは大声で泣きながら降参の意を 示した。 大声で泣き続けるれいむを前に、すっかり困った俺は残っている分身 たちに目を向けた。 分身たちはにたにたと笑っていた。 「ゆふふ、ほんたいがやられたようだね」 「ほんたいはれいむたちのなかでもいちばんのこもの」 「にんげんさんごときにやられるとはれいむのつらよごしだよ」 「「「おぉよわいよわい」」」 先ほどまでの嫌らしい笑みから一点、大声で笑い始める分身たち。本 体のれいむはその場で(上下逆さで動けないため)声を上げた。 「どぼじでぞんなひどいごどいうのー?!」 「うるさいよ!」 「うごけないほんたいなどひつようないよ!」 「ゆっくりしね!」 そう言って分身たちは揃って上下逆さの本体の上に飛び乗り、本体れ いむを押し潰した。 「ゆぴぃっ!」 「「「きたないはなびだね!」」」 三匹が縦に重なりまるでトーテムポールのような形になってそう言う 分身たち。こいつらどこの戦闘民族なのだろうか。 俺は、いい顔でそこに佇むトーテムポールに向かってささいな疑問を 投げかけてみた。 「お前ら、分身なのに本体なしで存在できるのか?」 「「「…………」」」 それを聞いた分身たちは、目を白黒させる。 そして、揃ってこう叫んだ。 「「「うっかりー!」」」 分身たちが叫ぶと同時に、一番下の分身の体が潰れた本体れいむの餡 子の中へずるずると引きずり込まれだした。きっと母なる海へと帰る のだろう。 涙目になった分身達は、引きずり込まれながらも俺に向かって言葉を 投げかける。 「これでかったとおもわないでね」 一匹目が完全に飲まれる。 「たとえれいむがきえてもひとのこころにゆっくりしてないこころが あるかぎり」 二匹目中ほどまでが飲まれる。 「だいにだいさんのれいむがおにいさんのまえにあらわれるよ」 三匹目の足が飲まれ始める。 「そのときまでせいぜい」 そして、三匹目の頭が完全に飲まれるかどうか、という所で。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 声を揃えてそう言うと完全に分身達はこの世から消え、後には一匹分 のれいむの死体だけが残った。 俺は、あの分身たちの言葉を思い出す。 『ひとのこころにゆっくりしてないこころがあるかぎり――』 人がゆっくりするまで、ゆっくりという哀しい存在は生まれ続ける。 人はもっとゆっくりするべきだ。それを教えるため、ゆっくりは生ま れ、そして死んでいくのだろう。 俺は、もうれいむのような哀しい存在が生まれないよう願いながら、 言った。 「さて、余計な時間を食ったし急いで帰るか」 おわり このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2997.html
※純真無垢な子ゆっくりが・・・。 ※少し・・・な人間が・・・。 ※前後編でお送りします。 前編はスタンダード(笑)な虐め。 後編は続きが気になった方のみ御覧ください。 ◆『清く、ゆっくり、美しく』前編◆ 白いレースのカーテンが日の光に煌き、穢れの無い純白光がリビングを照らす。 部屋の壁紙は一面無地の白色で、カーペットから天井、家具、引き出しの把手に至るまで、 あらゆる物が白色で染められていた。 そんな目も眩むような部屋の中央、 白いソファーに若い女性が腰を沈め、テレビの画面をじっと見つめている。 テレビの筐体もボタンの一つ一つにまで白のペンキで染め上げられていた。 『いま巷では空前の『ゆっくり』ブーム!! 親子でゆっくり戯れるその姿は、見る者を癒し、ペットの代わりとしても大人気!! 今回の『先どりBOOM』はこの『ゆっくり』の魅力をたっぷりとお届けします!!・・・』 女性はワイドショーの1コーナーに釘付けになり、すっかりと『ゆっくり』に心奪われてしまった。 これまでにもペットとして猫を飼おうとした事もあったが、その体毛が部屋中にばら撒かれ、 また排泄物の処理などが女性には耐えられなかった。 結局、猫との共同生活はうまくゆかず、知人の伝で引き取ってもらう事となった。 女性は潔癖症なのだ。 人間関係でもトラブルが絶えなく、男性との付き合いもうまく行かなかった。 それでも何モノかと触れ合っていたい。 先の猫を飼った事情もそんな願望ゆえの試みだったのだ。 さっそく女性はゆっくりを取り扱うペットショップへと向かった。 夕方。 オーブントースターほどの箱を抱えた女性が帰宅した。 箱は黒い包みで覆われており、中ではゆっくりが夜だと勘違いして眠っているのだ。 女性は玄関で衣服と箱をホコリ採りで掃除し、殺菌スプレーを吹きかけてリビングへと向かった。 テーブルに箱を置き、それを覆う黒い包みを開封する。 プラスチック製の透明な昆虫用飼育箱の中では、拳より少し大きいくらいの子まりさ、子れいむが2匹ずつ眠っていた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆりかごさん・・・ゆぅら・・ゆぅ・・・」 「「「ゆすぅ・・・ゆぅ・・・・」」」 幸せそうに眠る4匹の姿に、女性も自然と笑みがこぼれる。 ゆっくり達を起こさないよう、大事に持って帰った甲斐があった。 女性は子ゆっくり達が眠っている間に夕食をとることにした。 リビングにはダイニングからのおいしそうなシチューの匂いが漂っていた。 その匂いに釣られて子ゆっくり達が目を覚ます。 「・・・ゆっ!! おいしそうなにおいだよ!! 」 「ゆっ!! ごはんのじかんだね。」 「ゆー!! とってもきもちよくねむれたよ。」 「ゆゅ!! いっぱいねたら、いっぱいおなかがへったよ!!」 その様子に女性も気がついたのか、食器洗い器に食器を片付け、飼育箱の傍に寄って行く。 網状の蓋を取り、飼育箱の隅をコンコンと小突いてみた。 子ゆっくり達が一斉にこちらを向く。 「ふふ、おはようおちびちゃん達。」 「ゆゆっ? おねーさん・・・?」 「ゆ、 おねーさんはゆっくりできるひと?」 「ええ、ゆっくりできるわよ。今日からここがあなた達のおうちよ。 これからは私と一緒にゆっくりしましょうね。」 「ゆー!! おねーさんとてもゆっくりしてるよ!!」 「とてもゆっくりできそうなおねーさんだね」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「まりさといっしょに すりすりしてねっ!!」 飼育箱の中から子まりさが飛び出そうとした。 女性は、サッと蓋を元に戻す。 急に蓋を閉められ、勢いあまって天井に激突する形となった子まりさ。 「ゆびぇっ!!」 「まりさ?!」 天井に激突した子まりさは、子れいむの上に落下した。 「ゆぐっ!!」 「ゆぎぃ!! おもいよまりさ、ゆっくりどいてね!! ゆっくりどいてね!!」 「ゆげぇ!! このおねーさん、ゆっくりさせてくれないよ!!」 「ゆー!! おねーさん、まりさになにするの!? ゆっくりあやまってね!!」 「ごめんなさいね。でも、遊ぶ前に体をきれいにしようね。」 「ゆ? きれいきれい?」 女性はゆっくり達が入った飼育箱を持ち上げると、洗面所へと向かった。 透明な箱の中で宙に浮いたと錯覚したゆっくり達はキャッキャとはしゃいだ。 「ゆわぁー!! おそらをとんでるみたい!!」 「れいむもことりさんになれたよ!!」 先程の事はすっかり忘れ、歓喜の声を上げるゆっくり達の様子に、女性も安堵の表情を浮かべた。 ひとまず飼育箱をタオルなどが収納された棚の上に置くと、 女性は髪を後ろで束ね、ゴム手袋とエプロンを装着した。 「ゆゆ、おねーさん、”おねーさん”みたいだよ!!」 「ふふ、もう少し待っててね。」 女性は洗面台の栓を締めると蛇口を捻り、ぬる目のお湯を張った。 そしてその中にボディソープをいくらか流し込み泡立てる。 立ち上る湯気の中に、泡の雲の世界が完成した。 「ゆわぁー!! あわあわさんのおふろだよ!!」 「とってもきもちよさそうだね。」 「れいむもいっぱい きれいきれいしてね。」 「ゆー!! まりさもあわあわさんと いっぱいともだちになるよ!!」 準備を終えた女性はゆっくり達の入った飼育箱の蓋を開いた。 「ゆー!! まりさをいちばんに きれいきれいしてね!!」 「こらこら、ゆっくりまってね。」 女性は慌てる子まりさを嗜めると、次々にゆっくり達の帽子、髪飾りを取り上げていった。 「ゆぎゃああああああああ!!! ばりざのぼうしかえじで!!!」 「れいぶのがわいいりぼんどらないでええええええええ!!!」 「ゆうぇぇぇぇん!! びぼんがないどゆっぐりでぎないいいいっ!!!」 「がえじで!! がえじでぇ!! ばりざのぼうじ、いまずぐがえじで!!!」 半狂乱に陥ったゆっくり達は、なんとか髪飾りを取り戻そうと飼育箱から飛び出そうとする。 女性は再び飼育箱の蓋を閉めた。 「こらっ!! 静かにしなさい!! そんな事じゃゆっくりできないわよ!!」 「うるざいっ!! ぼうじがなきゃゆっぐりでぎないよ!!」 「れいぶのりぼんがえじで!! どうじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!?」 「帽子被ったままじゃ、きれいきれいできないでしょ! これは洗濯して綺麗にしたら返してあげるから、安心しなさい。」 「ゆぐぐぐぐ・・・。ほんどうなの? うぞづいたら、まりざドッカーンするよ!!」 「でいぶのびぼんにひどいごどじないで!!」 「はいはい、分かってるから静かにしてね。」 女性は洗濯槽にゆっくり達の髪飾りを放り込む。 そして棚から一つのボトルを取り出すと中の液体を流し入れて、蓋を閉めた。 初めて見る洗濯機を不安な表情で見つめる子ゆっくり達。 女性が洗濯機のスイッチを入れると、洗濯機の中から水が流れる音がし、ゴトゴトと動き始めた。 その様子を見つめる子ゆっくり達の表情がますます曇ってゆく。 「ゆぅぅぅぅっ!! やっぱりへんだよ!! おねーさんがまりさたちをだましたんだよ!!」 「れいぶのりぼんにひどいごどじないっていっだのにぃぃぃっ!!!」 「がえじでっ!! ばりざのぼうじ、いまずぐがえじでっ!!!!」 「いい加減にしなさい!! ゆっくり出来ない子はお仕置きするわよ? さ、みんな一緒にきれいきれいしようね。」 女性は子ゆっくり達の入った飼育箱を持つと、その中身を泡立てたぬるま湯の中へ流し入れた。 「「「「ゆゆぅぅぅぅ〜〜〜!!」」」」 ゴロゴロ転がり、泡の中へと消えてゆく子ゆっくり達。 ゆっくりは動物とは違うので、手入れも楽だとTVで言っていた。 程なくして、子ゆっくり達の悲鳴が泡の中から聞こえてきた。 「ゆぎゃああああ!! めがああああああああ!!」 「おべべがじみるよおおおおおおおおおおお!!」 「ゴボ、ゆご、このおみじゅ、ゴボ、にがいよおおおおおおおお!!」 「ばりざの!! じみるううう!! ぼうじ !! にぎゃいよおおおおお!!」 「ちょっとっ!! どうしたの!? おとなしくしなさい!!」 子ゆっくり達は洗面台の中で暴れ喚き、そして一斉に飛び出した。 「あっ!! こらぁっ!!・・・」 「「「「ゆべぇっ!!」」」」 子ゆっくり達は洗面台から落下し、呻き声を上げながら洗面所の外へと逃げ出す。 床に泡と濡れた跡を残しながら子ゆっくり達は一心不乱に跳ねて行く。 女性がリビングの方へ探しに行くと、テーブルの下でわんわんと泣き喚く4匹の姿を発見した。 リビングのカーペット、特にテーブルの周りはビチョビチョに濡れていた。 女性は抱えた飼育箱に4匹を放り込み、洗面所へと戻る。 飼育箱を棚の上に置き、リビングの始末をして戻ってくると、子ゆっくり達は小さな声で囁き合っていた。 「ゆぅぅぅ・・。 あのおねーさんはゆっくりできないよ・・・。」 「おめめがまだいたいよ・・・。」 「にがいおみじゅ いっぱいのんじゃって、ぺっぺっできないよ。」 「まりさのぼうじ、はやくかえしてほしいよ。」 再び現れた女性の姿に、静まり返る子ゆっくり達。 雑巾を洗い終えた女性は飼育箱を抱えると浴室へと入って行く。 そしてその中身を浴槽の中へと放り込んだ。 「「「「ゆぎゃん!!」」」」 子ゆっくり達は浴槽の隅に集まり、怯えた表情で浴槽の縁を見上げる。 女性は浴槽の傍に腰を屈め、1匹の子れいむを掴み上げた。 「ゆわぁあああん!! はなしてっ!!」 「私の目を見なさい!!」 「ゆぁぁ・・・?」 「あなた達のおかげで部屋がグチャグチャになったじゃない!! ゆっくり出来ない子にはお仕置きですっ!!」 そう言って女性は子れいむの頬に平手打ちを放った。 バチンーーッ!!! 「ゆぎゃんっ!!」 子れいむのもち肌が打たれ、浴室内に小気味良い音が響き渡る。 その様子を見上げていた他の子ゆっくり達。 「ゆわあああああ!! れいむをいじめないでえええええええ!!!」 「どおおおおじでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおお!!?」 「ばりざのぼうじに、ひどいごどじないでえええええええええ!!!」 女性は別の子れいむを掴み上げると、同じ様に平手打ちを放ってゆく。 「私の目を見なさい!! お部屋をメチャクチャにする悪い子は、お仕置きです!!」 バチンーーッ!!! 「ゆびゃっ!!」 バチンーーッ!!! バチンーーッ!!! 他の2匹にも同様に平手打ちを喰らわせた女性、今度はシャワーからぬるま湯を出し、 その先を浴槽内の子ゆっくり達に向けた。 浴槽内は阿鼻叫喚の巷と化す。 「ゆわあああああ!! ぼうやべでえええええええ!!」 「も゛うい゛やあああああああああああああ!!」 「ごごがらだじでえええええええええ!!」 「ぼうじがないど、ぬれじゃうよおおおおお!!」 「濡れた体で部屋の中跳び回るから、いっぱい汚れが付いちゃってるでしょ。」 女性の家は隅々にまで清掃が行き届いているので、ホコリの一つを見つけるのも大変だったが、 それでも女性には絶え難かった。 逃げ回る子ゆっくり達を、容赦無くぬるま湯の雨の柱が追いかける。 浴槽の栓は外されているので、湯が溜まる事は無い。 1分ほどシャワーを浴びせた後、女性は風呂桶の中にぬるま湯を張り、 ボディーソープを入れて泡立てた。 そして浴槽から1匹の子まりさを掴み上げる。 子まりさは女性の手から逃れようと暴れたが、女性は構わず子まりさを風呂桶の中へ沈めた。 「ウゴボボボゴボボボボ・・・!!」 「さあ、今度こそきれいきれいするわよ。」 風呂桶から子まりさを引き上げると、風呂桶の泡と湯を手に取り、子まりさの髪の毛に擦り付ける。 女性は子まりさの髪の毛を痛めないよう指先を使い、根元から毛先まで丁寧に洗い始めた。 初めは泣き喚いていた子まりさだったが、女性の指先がマッサージのように気持ちよくなったのか、 「ゆわ〜♪ ゆ〜くり〜の〜♪ おふろ〜〜♪ あわっあわっ〜〜♪」 と歌い始めた。 浴室内に響くその歌声に合わせて、浴槽からは 「「「ゆんっ♪ ゆんゆんっ♪」」」 と 3匹のハミングする声が聞こえてくる。 「はーい、こんどは顔もきれいきれいしようね。」 「ゆ〜ん♪ ゆ〜くり〜♪ りかい〜♪」 「「「ゆんっ♪ ゆんっ♪」」」 女性は手の平の上で子ゆっくりを仰向けにし、子まりさの顔を洗ってゆく。 おでこから口の周りまで女性の指先が這い回り、くすぐったそうに目を瞑る子まりさ。 「こんどは体よー。」 「まりさの〜♪ つるつる〜♪ なまあし〜〜♪」 「「「ゆんっ♪ ゆんゆんっ♪」」」 全身を女性の指先で撫で回され、子まりさはヘブン状態。 「さーて、おめめも綺麗にしようねー。」 「まりさの〜♪ キラキラ〜♪ おめめ〜♪」 「「「ゆんっ♪ ゆわ〜〜〜♪」」」 女性は子まりさの瞼を親指と人差し指でこじ開け、眼球の表面をもう片方の指の腹でこすり始めた。 「ゆっ♪!? ゆぎゃあああああああ!! ゆぎぃっ!! ゆぎぎいいいいいいいい!!」 「「「!!!?」」」 以前にTVCMでやっていた。 眼球の表面にはホコリなど、小さな汚れがたくさん付着しているのだ。 女性は専用の洗眼剤を所有していたが、使用者以外の者と共用する事は推奨されない。 ましてや他所から来た得体の知れない物体とそれを共用するつもりは無かった。 子まりさの目にソープ水をかけ、万遍なくこすり洗う。 「まぶたの裏も綺麗にしようねー。」 「びぎゃん!! やべでっ!! めがああっ!! ぼおおおうやべっでええええええ!!」 「まりさがいやがっでるよっ?! やべであげでねええええええええええええええ!!」 「ばりざぁっどうじだの!? ばりざをはなじであげでええええええええええええ!!」 「ばりざのぼうじがえじでぇっ!!! がえじでえええええええええええええええ!!」 浴室内に4匹のハーモニーが響き渡る。 洗い終えた時には子まりさの眼球はあずき色に充餡し、まるで水羊羹のようだった。 今度は女性は洗面所の棚から、買い置きの歯ブラシを持って来た。 ブラシの先をソープ水で濡らし、子まりさの口へと突っ込む。 「お口も綺麗にしないと、虫歯さんになっちゃうぞ。」 「ゆぶびゃああああああああ!!!」 女性は”かため”の歯ブラシを愛用していた。 人間にとっては何の事は無い固さだが、饅頭で出来たゆっくりの体、 ましてや水気を吸った今ではこの固さのブラシは凶器である。 女性は運動靴の汚れを落とす感覚で子まりさの口内を磨いていった。 「はぎゃぎゃぎゃぎゃ!! にぎゃぎぎゃぎゃぎゃ!! ぶびょばあああああ!!!」 「こらじっとしなさい!! 口の中が見えないでしょ。ほらベロを出してごらん。」 女性が子まりさの舌を引っ張り出そうと口の中に指を入れたその時だった。 子まりさの顎が勢いよく閉じ、女性の指先に噛み付いた。 「いったっ!!!」 「ゆべっ!!!」 思わず女性は子まりさを床に放り投げてしまう。 指先を見るとゴム手袋の先が破れ、血が滲んでいるのが分かった。 女性は風呂場から出ると洗面台で指先を良く洗い、消毒液と絆創膏で処置をした。 「もうおうじがえるうううううううううううう!!!」 「ばりざあああ!! だいじょうぶううううう?!!」 「でいぶもおうじがえりだいよおおおおおおお!!!」 「ばりざのぼうじがえじでえええええええ!!!」 別のゴム手袋を装着し風呂場に戻ると、子まりさが浴槽の縁に身を寄せて叫んでいた。 女性は子まりさの髪を掴み上げ、自身の顔の高さまで持ち上げた。 無言で見つめてくる女性の視線と目を合わせた子まりさは、激しく身を揺すって喚きだした。 「ゆうう!! はなじでっ!! ゆっぐりはなじでっ!!」 「私の目を見なさい!!」 「い゛や゛ああああ!! もおバヂンはい゛や゛ああああああああああああ!!!」 バチンーーッ!!! その音は浴槽内の子ゆっくり達にもはっきりと聞こえ、浴槽内から喚き声が上がる。 「私の指を見なさい!! あなたのせいで痛い思いをしたのよ!! 謝りなさい!!」 「ゆああああああ!!! もうおうぢがえじでえええええ!!」 バチンーーッ!!! 髪を掴まれ、パンチングボールのように揺れる子まりさ。 「ごめんなさいでしょ!! 悪い事したら謝らなくちゃいけないって教わらなかったの!!?」 「ごおおおめんだざああい!!! もおうじまぜんがら、ゆるじでくだざあい!!!」 「よしよし、いい子ね。分かれば良いのよ。」 子まりさに微笑みかける女性。 すぐ傍の鏡で自分の姿見てみろよ。と突っ込みたくなるが、 女性は再び子ゆっくりを手の平で掴み直すと、歯ブラシを手に取った。 「ほら、ベロ出してね。」 「ゆぅ・・・ゆ・・・。」 子まりさは恐る恐る舌を出した。 女性はその舌を親指で押さえつけ、歯ブラシでゴシゴシと磨いた。 「ゆべえげええええええええええええええええええええええ!!!!」 子まりさの舌はズタズタに耕され、二度と「む〜ちゃ〜♪ む〜ちゃ〜♪ ちあわせ〜〜〜!!」と出来なくなった。 女性はぬるま湯のシャワーで子まりさの体を洗い流すと、フカフカのバスタオルで子まりさを拭いてやる。 「さ、きれいきれいの時間は終わりよー。他の子が上がるまでゆっくり待っててねー。」 飼育箱の中に子まりさを入れてやる女性。 子まりさは壁にぶつかりながら這いずり、箱の隅でガタガタと振動した。 子まりさが見る景色は、蜘蛛の巣状にヒビの入った様な模様が常に付きまとい、 近くの物でないとボヤけて見えるようになっていた。 もうどんなに礼賛されるべき絶景を眺めても、ゆっくりする事はできないのだ。 箱から遠ざかってゆく女性の後姿がボヤけてゆく。 そして風呂場の方から子れいむの悲鳴が聞こえてきても、「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」と呻く事しか出来なかった。 きれいきれいの時間が終わり、ダイニングでは4匹の子ゆっくり達が飼育箱の中で身を寄せて振動していた。 「さーて、みんな。ごはんにしましょ。」 「「「「ゆ? ごはん!?」」」」 子ゆっくり達は床に敷かれた新聞紙の上に出される。 地獄のような拷問を受け、疲弊しきった子ゆっくり達の中に希望の灯火が再燃する。 白い皿を持った女性が近づき、子ゆっくり達の前に差し出す。 白い紙皿の上にはジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、の皮がたんまりと盛られていた。 TVのコメンテーターが言っていたのだ。 ゆっくりは雑食で、うちではクズ野菜や調理で出た生ゴミを食べさせて処分してもらっているのだと。 「「「「ゆ・・・・?」」」」 「さあ、溢さずゆっくり食べてね。慌てなくてもまだあるからね。」 室内にはシチューの甘ったるい匂いがまだ残っていた。 子ゆっくり達は名前も知らぬ人間の食べ物の匂いに期待を膨らましていた。 しかし目の前の”ごはん”は見るからに不味そうである。 これが期待していた物だったのだろうか。 子ゆっくり達は空腹には逆らえず、目の前に盛られた”ごはん”をその口に入れ始めた。 「「「「ゆゆっ?!!!」」」」 子ゆっくり達は困惑した。 今まで何かを口にした時は必ず「むちゃ〜むちゃ〜しあわせ〜♪」か「まぢゅい!! こんなのいらないよ!!」 の感想が出てくるはずだった。 しかし確かに口の中で何かを咀嚼する感覚はあるのだが、何も味覚を感じないのだ! 嫌な予感がする。このままではゆっくりできなくなる気がする。 慌てた子れいむが今度は別の色をした皮を口にしてみる。 結果は同じだった。 三大欲求の塊のようなゆっくり。 そこから普段最も楽しむ機会が多い”食の楽しみ”を奪われれば、1日のほとんどがゆっくり出来なくなるのは明白だった。 空腹が紛れ、食欲が満たされてゆくのは感じるのだが、 どちらかというと「しあわせ〜♪」よりも「まぢゅい!!」の感覚に近かった。 困惑する頭で考えた後、子れいむはこの食べ物を吐き出す事にした。 「ゆっ!! れいむはゆっくりきめたよっ!! まぢゅいっ!! こんなのいらないよ!! ぺっぺっ・・・」 子れいむが吐き出した吐しゃ物は、新聞紙の上を通り越し、ダイニングの床へと落ちた。 「みんな!! このたべものはゆっくりできないから、たべちゃ・・・」 突如、女性の足がドン、ドン、と近づいて来る。 何事かと不思議に思っている内に、子れいむはゴム手袋を装着した手で掴み上げられていた。 そして自らの吐しゃ物にその顔を向けられた。 「これは何なの!?」 「ゆゆぅ? これはおねーさんがだしたご・・・」 今度は女性の顔を見せ付けられる子れいむ。 「私の目を見なさい!!」 「ゆ゛ゆ゛っ?!!」 先の出来事が子れいむの表情に暗い影を落とす。 「せっかくのごはんが、綺麗に食べなきゃダメでしょ!!」 「ゆゆっ!! ゆっくりできないたべものは、ぺっぺっするんだよ!!」 バチンッ!!! 「ゆべんっ!!!!」 女性の手から弾き飛ばされ、床に転げ落ちる子れいむ。 「やめであげでえええええええ!!!」 「でいぶにひどいごどじないで!!!」 「いいがら、ばりざのぼうじがえじで!!!」 「あなた達もよく聞きなさい!!」 女性が再び子れいむを掴み上げると、女性の顔の前まで持ち上げた。 「私の目を見なさい!!」 「ゆぅぅぅわあああ・・・もういやだあああああああああああああああああああ!!!」 「いいこと!? これからはご飯を食べる時は新聞紙の上から溢さずに食べなさい。 それから出されたごはんはきちんと食べる事。口に合わなかったのならこちらも努力するわ。 けれどもあなた達も私と同じ物を食べている事を忘れないで。わがまま言う子はお仕置きです!! わかったかしら!?」 「ゆっぐりでぎないおねーざんは、ゆっぐりじねええええええええええええええっ!!!!」 バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!! バッチンッ!! 「なんて言葉を使うの!!? 謝りなさい!! こういう時は『ごめんなさい』でしょ!!」 バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!! バチンッ!! 「ずびばぜんでじだあああああ!! ごべんなざあああいいいいいいいいい!!」 子れいむは解放され、他の子ゆっくり達の元へと這いずっていった。 「でいぶぅっ!! だいじょうぶぅ? でいぶぅ!!」 「じっがりじで!! ばりざどいっじょにゆっくりじよ、でいぶぅ!!」 「もういやあああああああ!! ぼうじがぶっって、おうぢかえるううううううううう!!!」 「だからここがあなた達の”おうち”って言ってるでしょ!!」 女性は片手に持った鍋からシチューの残りの汁の部分を掬うと、ゆっくり達の餌の上に垂らしてやった。 先程よりはいくらか見た目は良くなったが、結局、子ゆっくり達の舌を満足させる事は無かった。 「いいこと? 私と一緒に暮らしていく以上、私との決まり事をきちんと守って頂戴!!」 「ゆっぐり、ゆっぐりりがいじまじだから、ゆっぐりさぜでぐだざいぃ・・・」 どうやらこの女性は極度の潔癖症以外にもいろいろとアレなようだ。 しかし子ゆっくり達が生きてゆくには女性の言う事を聞くしか無かった。 子ゆっくり達はこれから先、その心まで真っ白に洗い流されてゆくのだった・・・。 『清く、ゆっくり、美しく』前編 おわり ※後編は虐め成分はほとんどありませんので、前編で興味を持たれた方のみ御覧ください。 ◆『清く、ゆっくり、美しく』後編◆ 子ゆっくり達が女性の家を”おうち”にしてから1ヵ月後。 白いソファーに女性がゆったりと腰を沈め、その膝には白いひざ掛けが、 そしてその上には真っ白に漂白された帽子を被った子まりさの姿があった。 女性の右側には子れいむが1匹、左側には子れいむと子まりさがソファーの上で並んでいる。 テーブルを挟んだ正面のテレビでは、映画「ゆっくりず えんじぇる」が流されていた。 「みんな楽しい?」 「「「「ゆっくりー!!」」」」 「良かったわ。」 子ゆっくり達の髪飾りは皆、漂白され真っ白になっている。 それ以外は皆、街の広告などに描かれた標準的なゆっくりの表情のまま固定され、まるでぬいぐるみの様だった。 視線は真正面の一点を見つめたまま微動だにせず、話しかけられた時だけ相手の方へと向く。 子ゆっくり達の視界のほとんどは灰色の雲で覆われ、真正面の一部しか見る事が出来なくなっていた。 「映画が終わったら紅茶でも煎れて、お茶にしましょうね。」 「「「「ゆっくりー!!」」」」 「今日は街で評判のケーキを買ってきたから楽しみね。」 「「「「ゆっくりー!!」」」」 味覚を失った子ゆっくり達にとって評判のケーキの味など関係なかった。 生きるため、腹を満たすため、生ゴミも出されるがまま食べた。 女性との生活が始まって2週間目の夜。 その日も何回かゆっくりできない事があった。 子ゆっくり達は積もりに積もったストレスで、身も心もとてもゆっくり出来ていなかった。 眠りに着いた子まりさは夢の中で、ある”光”を見つめていた。 その光はとてもとても小さく、果ての無い暗雲の世界で儚げに輝く。 光は透明な球体で覆われており、その厚さは子まりさのほんの一押しで壊れそうなほど薄く、 光と暗雲とを隔てていた。 球体の中の輝きはオーロラの様にゆらゆらと色を変え、 耳を澄ますと中から「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!・・・」と微かに聞こえてくる。 その光の中を覗くと、とてもゆっくりする事ができた。 ここしばらくゆっくりできていない。 このまま光の中に入って行きたい! ほんの一押しで、透明な球も突き破られそうなのだが、ふと思い止まる。 このまま透明な球を破ってしまうと、何故か自分が”ゆっくり”ではなくなってしまう気がしたのだ。 「(・・・・・!・・・・・!・・・・・!)」 突如、誰かが自分を呼んだような気がした。 振り返ると、そこには仲の良い3にんの子ゆっくり達の姿があった。 3にんの姿がグニャリと形を変え、暗雲となる。 その暗雲の中には子まりさの数々の思い出が投影されていた。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 目の前は未だ暗闇の中。 赤まりさは「ゆっきゅりうまれりゅよ!!」と力一杯に体を揺らした。 頭の先が何かから千切れる感覚がし、赤まりさは平らな地面の上に落っこちた。 赤まりさは本能に従ってゆっくりと瞼を開く。 初めてその目で見た景色は、大小様々な”棒”や”箱”が動き回る世界だった。 「ゆぅぅぅぅ!!」 赤まりさにとっては目に見えるもの全てがゆっくりできる物に見えた。 ふと赤まりさはある事を思い出す。 それは”おかーさん”の前でゆっくり挨拶する事だった。 赤まりさは”おかーさん”の方を向こうと、ぴょんと飛び跳ね、振り返った。 しかし目の前は冷たげな色をし、鈍い輝きを放つ壁しかなかった。 「ゆぅ?」 不思議に思った赤まりさがその壁を見上げると、壁にはいくつもの穴がずらりと並んでおり、 穴の一つ一つから1本づつの茎が伸びていた。 そしてその先には、まだ目を開いていない、何にんもの赤ゆっくり達が実っているのだ。 「ゆー!! まりしゃのおとみょだちが、いっぱいだよ!!」 ”おかーさん”の姿は見当たらないが、頭上を通り過ぎて行く沢山の”おともだち”に赤まりさは嬉しくなった。 そしてようやく赤まりさは眼前の壁が動いている事に気がつく。 赤まりさが生まれ落ちたのはベルトコンベアの上だったのだ。 「ゆー!! まりゅで ありゅいてるみたい!!」 このままゆっくりしていれば”おかーさん”にも会えるのだろう。 赤まりさはそのまま検査区画へと運ばれていった。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 目を覚ますとそこは見た事も無い部屋の中だった。 正面の壁は透明になっており、その先には沢山の窓が並んだ壁が見える。 自分がいる部屋の中では、何にんもの子ゆっくり、赤ゆっくり達が各々ゆっくりしていた。 「ゆぅ・・・?」 「ゆ〜♪ ゆゆ〜♪ ゆっくり♪・・・あっ、めをさましたよ!!」 赤まりさの周りに子ゆっくり達が集まってくる。 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」」」」」 「ゆっ!? ゆっくちしちぇいっちぇね!!」 赤まりさにとって初めての同族との触れ合い、そして初めての「ゆっくりしていってね!!」だった。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 赤まりさにとって子ゆっくり全てが友達だったが、中でも3にんの赤ゆっくり達と仲良くなった。 自分と同じまりさ種の赤まりさと2りの赤れいむだ。 聞けば彼女達も動く地面の上で生まれたそうだ。 「きょうもみんにゃで、ゆっくちしようね!!」 「「「ゆっくちしちぇいっちぇね!!」」」 4にんは透明な壁の前に並んで、向こう側の景色を眺めるのが好きだった。 透明な壁の向こう側には沢山の窓がついた壁が見え、その中では様々な動物達が暮らしている。 「ゆー!! ネコしゃん きょうもゆっくちしちぇるね!!」 「へびしゃんは きょうもクルクルしちぇるよ!! へびしゃんは ゆっくちできるね!!」 「れいみゅも ことりしゃんみたいに とんでみちゃいよ!!」 「トカゲしゃんの”えりまき”もかわいいけじょ、まりしゃのぼうしのほうがかわいいよ!!」 透明な壁の向こうの景色は一日中見ても飽きる事無く、とてもゆっくりする事が出来た。 ガチャンッ。 「ごはんの時間よ。」 透明な壁と反対側にある扉が開かれ、エプロンを着けたにんげんの”おねーさん”の顔が覗く。 差し入れられた皿の上には、ごはんがたんまり盛られていた。 皿の周りに子ゆっくり、赤ゆっくり達が集まり輪になる。 「「「「「「「「「「む〜ちゃ〜♪ む〜ちゃ〜♪ ちあわちぇ〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」」」 他の動物達の餌で余った物を混ぜ合わせた物だったが、子ゆっくり達には過ぎたご馳走だった。 「なんか食べられない物があったら、ちゃんと吐き出してね。」 「ゆっくりりかいしたよ!! まずいときは、ぺっぺっするね!!」 ゆっくり専用のペットフードなど存在しない。 時々ではあるが、本当に口に合わないごはんを出される事もあった。 皆でごはんを食べた後は、思い思いにゆっくり過ごす。 「いつまでも4にんでゆっくちちようね!!」 本来ゆっくりは森に住み、大自然の中で様々な動植物に囲まれて暮らす。 本能に刻み込まれた感覚と、ここでの生活は非常に近いものがあり、 そこは子ゆっくり達にとって最高の”ゆっくりぷれーす”だった。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 透明な壁の向こうには、にんげんさんのこどもも遊びに来た。 4にんはこどもの顔の前で仲良く並び、挨拶する。 「「「「にんげんしゃんのこどもしゃん、ゆっくちちて・・・」」」」 バ ン ッ!!! 「「「「ゆびゃぁっ!!!」」」」 不意に透明な壁を叩かれ、驚く赤ゆっくり達。 時々ゆっくりできないにんげんさんもやってくる。 しかし透明な壁が自分達を危害から守ってくれた。 「(こら!! たかし!! お店の人に謝りなさい!!)」 パチコン!! 「(ああああ!! ごめんなさあああいいい!!)」 「ゆゆ!! にんげんしゃんのこどもしゃん、おきゃーしゃんにおこられちぇるよ!!」 「わるいことしゅると、おかーさんにおこられりゅんだね!!」 「ゆぅ・・・。まりしゃもおかーしゃんとあいたいよ・・・。」 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 赤まりさもすっかり成長し、子ゆっくりのサイズになっていた。 今日も友達のなんにんかが、ここを旅立って行く。 おねーさん曰く、「人間さんの所で、もっとゆっくりしにいく」だそうだ。 「とかいはなありすのほうが ながくここにいるのに、しつれいしちゃうわ!!」 最年長の子ありすが頬をぷくーっと膨らましてご立腹のようだった。 しかし、去るものがいれば、新しくやって来るものも多かった。 ここに来てからの友達も随分と減ったが、子まりさはここでみんなとゆっくりできれば満足だった。 その日の夜。 最年長の子ありすと数にんの子ゆっくり達がおねーさんによって部屋から出された。 「ようやくわたしのばんがきたのね。にんげんさんのところで、さらなる”とかいは”になってみせるわ!! いなかものは そこでずっと ゆっくりしてるといいわ。」 おねーさんは何も言わずに部屋の扉を閉めた。 最年長の子ありす達が居なくなり、子まりさ達4にんが部屋の最年長組となった。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 数日後、透明な壁の向こうから、にんげんさんのおねーさんが覗いてくるのに気がついた。 透明な壁の前でゆっくりしていた子まりさ達は、その顔を不思議そうに見つめた。 「ゆぅ? にんげんさんのおねーさんが、のぞいてるよ!!」 「にらめっこかなぁ?」 初めは他のゆっくり達の方も見ていたのだが、やがて一番近い透明な壁の前の4にんだけをジロジロと見つめだした。 4にんぜんいん、ひとりひとりと目線を合わせてゆく。 「ゆぅ?! みんなであいさつしようね!! せーの・・・」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 すると、おねーさんの顔が微笑み、自分達の前で手を振ってくれた。 「「「「ゆうううううううううううううう!!!」」」」 「おねーさんがてをふってくれたよ!!」 「とてもゆっくりできそうな、おねーさんだね!!」 「れいむ、おねーさんとともだちになってもいいよ!!」 「まりさのかわいいぼうし、みていってね!!」 程なくして、おねーさんが透明な壁の前から消え、代わりに部屋の扉が開いた。 子まりさ達4にんが部屋から出される。 「ゆぅ!? ゆっくりはなしてね!! まりさはここでゆっくりしたいんだよ!!」 「今日からは人間のお姉さんのところで暮らすのよ。」 「おねーさん? さっきのゆっくりしたおねーさん?」 「さあ? そうかもね。」 そう言って飼育係の女性は子まりさ達4匹を箱に詰め、アルコールを薄めた霧吹きを吹きかけた。 「ゆゆ!? なんだかねむ・・た・・く・・・」 中の子ゆっくり達が眠りに落ちたのを確認すると、飼育係の女性は黒い紙で箱を包装し始めた。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 ゆっくり目を開くと、子まりさは暗雲の中で3にんの子ゆっくり達と向かい合っていた。 「ゆぅ・・・。あのころにかえりたいよ・・・。」 溜まらず涙が零れてしまう。 「まりさ・・・。もうむかしにもどることはできないよ。 でもきいてね。あのひかりはゆっくりできるよ!! きっと、とてもゆっくりできるせかいがまってるよ!!」 「れいむたちは これからさきずっとゆっくりするため、ゆっくりしたみらいのため、 あのひかりのなかにいくよ!!」 「でもあのひかりにはいると、なんだか”ゆっくり”じゃなくなるきがするよ!!」 「なにいってるの? れいむたちはゆっくりなんだよ!!」 「ゆっくりは ゆっくりするために うまれてきたんだよ!! ゆっくりの”ぎむ”なんだよ!!」 「まりさのぼうしはこんないろじゃないよ!! もうゆっくりできないくらしはいやだよ!!」 子まりさは3にんひとりひとりと目を合わせる。 「(私の目を見なさい!!)」 突如、女性の言葉が辺りに響き渡る。 「ゆぅぅぅぅ!! もうゆっくりできないのはいやだよ!! まりさもいっしょにいくよ!!」 「まりさ・・・。みんなでいけば、きっとだいじょうぶだよ!!」 「ゆぅぅぅ。ありがとうね、みんな!!」 3にんの姿がグニャリと形を変え、暗雲となる。 子まりさは振り返り、再び光の方へと向いた。 そして迷わず光の中へと突き進んだ。 自身と光とを隔てる透明な球を突き破る。 パリィィィィィィン・・・・・!! ガラスを割った様な音を立てて透明な球が砕け散る。 四方八方に飛び散った破片が光を反射してキラキラと煌き、 そしてその無数の破片が子まりさの顔面に突き刺さった。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああ!!」 思わぬ激痛に飛び退く子まりさ。 光と暗雲とを隔てるものが無くなり、暗雲がドロドロと光へと迫る。 よく見ると暗雲は餡子だった。 「どおおおじでぞうなるのおおおおおおおおおおおお!!」 その時である。 餡雲に飲み込まれようとしていた光が白く眩い閃光を放ち、一瞬にして膨れ上がる。 果ての無い餡雲の世界を作っていた黒い餡子が、眩い光に照らされ、白餡へと変わってゆく。 「ゆううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・!!」 子まりさの中身は淀みの無い白餡で満たされ、その心の内はただただ白い世界が広がるのみとなった。 翌日、子まりさは外部からの刺激に対して「ゆっくりー!!」としか反応しなくなっていた。 子まりさだけではない、他の3匹も同様の有様だった。 リビングが芳醇な紅茶の香りで満たされる。 女性は買ってきたケーキを一人で平らげ、ナプキンでその口元を拭いていた。 子ゆっくり達は、”カビの生えかけた食パンに紅茶を染み込ませた物”を半分ずつ平らげ、じっと正面を見つめている。 女性はゴム手袋を装着し、ウェットティッシュで子ゆっくり達の口元を拭いてやった。 「みんなおいしかった?」 「「「「ゆっくりー!!」」」」 「これからもみんな、ずっと一緒にゆっくりしようね。」 それを聞いた子ゆっくり達がテレビの前で整列し、女性の方を向く。 左からまりさ、れいむ、まりさ、れいむの順に。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 彼女らは得意げな笑みで、来る者を遍く歓迎する。 欲望のままに我が儘を吐き散らし、挑発的な言葉を吠える事も無い。 目先の利益に目を眩ませ、徒党を組んで破壊活動を行う事も無い。 私利私欲のため同族を裏切り、辱める事も無い。 心身が反応するがままに涎や涙、体液、糞尿を撒き散らす事も無い。 日頃の厳しい躾(?!)と徹底的な洗浄作業の末、 彼女らは”ゆっくりする事を失い”、”きれいなゆっくりとなった”。 『清く、ゆっくり、美しく』 おわり ※あとがき※ 都合の悪い事は聞き流し、思い通りにいかなかったら癇癪起こす。 どっちが餡子脳だよ。 そして書いてる舞台や設定に矛盾を感じつつも、都合の悪い所は目を瞑る作者も餡子脳。 書いてる途中で、ゆっくりに度の合わないコンタクトレンズ付けたらどうなるなぁ? ってのを読みたくなったりならなかったり。 相も変わらずダルイ文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。 ※今まで書いたもの※ ※「おでんとからし 〜おでん〜」 ※「おでんとからし 〜からし〜」 ※「トカゲのたまご 〜たまご〜」 ※「トカゲのたまご 〜とかげ〜」 ※「ゆっくりしんぶん <1面>」 ※「ゆっくりしんぶん <2面>」 ※「清く、ゆっくり、美しく」
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2730.html
前 *注意 ゆっくりいじめ描写無し。人間いじめ含む。 「こんにちは」 「………………」 「こんにちは」 「………………」 「ハロー・ニーハオ・ボンジュール」 「………………」 「さて、どうする、参謀? ワット・ドゥ・ユー・ドゥ?」 「言い直さなくていいです。私としてはちょうど良かったように思いますが、時期的に」 「クリスマスプレゼントか。天に召されるにしてもいい日ではあるな」 「観点が違いますよ、わざとでしょうけど」 「いや、そういう見方もできるということだよ。そう悪意でばかり捉えられると困るな」 「これまでの行いを省みることですね。ともかく調理班を呼ぶのが適当かと」 「うん、妥当だな。まあ、そうだ」 「長には、何か懸念でも?」 「いや、確かにこれは据え膳だろう。他の動物や妖怪に横取りされる前に、とどめを刺して解体するのが当然だろうな。ゆっくりは動物であり妖怪でもある存在だ」 「当然というより自然ですね。摂理に合ってます」 「それに、この衰弱具合では胃にも腸にも入っているものは何一つないだろう。臭みが取れていて美味いだろうな」 「そうですね。では、何が問題なんです?」 「意地が悪いな。本当はわかって聞いているんだろう」 「わかってはいますが、理解できないだけです」 「殺す人間を選り好みするのは、逆に生命を冒涜している……ということかな?」 「言いたいことの一つはそうですね」 「残りの理由は?」 「意地が悪いですね。本当はわかって聞いているんでしょう?」 「おぉ、言葉を返されるとは思わなかったな。というより、」 「『自分の意見を最小限にとどめて、相手の言葉を引き出す会話法を使っているね、さっきから』、ですか?」 「ハハッ、素晴らしい、その通り。いやいや、ますます可愛くなくなるね。売れ残りのクリスマスケーキも幾星霜を経れば、逆に価値が出るものなのかい?」 「それはお互い様ですから、ご自分の胸に聞くのが一番早いでしょう」 「本当に芯が強くなったなあ。もういっそお前さんが長をやったらどうかな。代わりに俺が参謀になろう。通り名はチビ黒参謀」 「そうですね。では引き継ぎを行いたいので、とりあえずどこかのお寺にこもってください。焼き討ちに行きますから」 「下剋上か。是非も無し。しかし、それではたった三日の天下だぞ」 「『鳴かぬならどうでもいいやホトトギス』」 「投げやりだな」 「では長もやり逃げはしないでください」 「責任は取れ、ということか。OK、認知しよう」 「ええ」 「俺の責任の下に、俺が命じよう」 「ではお考えをお聞かせ願いたく」 「まず、食糧に困ってない」 「困ってますよ」 「確実に餓死するほどではないだろう。備蓄にやや不安があるだけだ」 「流入してきたゆっくりが多すぎます。そのほとんどが冬眠もできず、食域も狭いです」「外部からの移民は晩秋初冬の風物詩だろう。予測した上で食糧は溜めておいた」 「それでも何かしらトラブルがあれば厳しいことになります。少しでも余裕があった方がいいでしょう」 「そう、それは認める。だが、絶対的に必要というわけでないのも事実だ」 「まあ……それは、その通りです、確かに。しかし、外部活動をする者たちからは不満も漏れ始めていますよ。『働かざる者が食うなんて』という旨のことです」 「それについては、食糧を前借りするのは正当な権利だと伝えておくことだな。それに流入者が下手に外部活動できるのでなくて、却って良かったのじゃないか? 外での活動が結局は一番糧秣を食うわけだしな」 「……ええ。少し話がずれてしまいましたね。苦しいところはあれど食糧は足りているという点で、長と私の意見は一致します」 「うん。それで、後の理由だが、お前さんの言う通り『選り好み』だよ」 「基準がわかりません。一体何ですか?」 「俺は面食いだ。彼は好みのタイプだ」 「なるほど」 「納得したか」 「はい」 「そうか」 「はい」 「………………」 「………………」 「すまない。俺が悪かった」 「早く話を進めてください」 「ん、基準の話だったな。上級の妖怪と同じ基準でこちらもやりたい」 「は? それは、ええと、確か」 「うん、生きるに値しない人間を選んで食べるということさ」 「『生きるに値しない』……というのはどういうことですか?」 「その辺りはまた話が長くなるな」 「しかしはっきりさせてくれないと困ります。ごく稀に私はそのことで酷く混乱するんですから」 「俺が不在の時は参謀の基準で行ってくれればいい。さっきの俺の基準は、群れにとっては最優先事項でないからな」 「確かにこれまでは問題なく処理できています。群れにおいても疑問視する声は聞かれません。けれど、曖昧にはしておきたくないんです。明確な基準とその意味をはっきりさせておきたいです」 「言い分はわかる。当然と言えば当然だ。わざわざ人里に入って人間を食い殺したと思ったら、今度は山で行き倒れた人間を助けたりするなんて、矛盾を感じてもおかしくはないな」 「え……? ……っ! 助けるつもりなんですか!?」 「そのつもりだ」 「信じられません。突発的かつ手前勝手な慈愛の精神に目覚めたのですか? このまま凍死にせよ、餓死にせよ、死ぬに任せておいてから解体するつもりだと思ってました。これなら殺さずに食糧を確保できます。でも、それでさえ理解できないというのに……」 「いやいや、理解できなくていいよ、そっちのつもりはないから。それに、通常なら殺してしまって問題ないというのはさっき言った通りさ。ただ、条件が揃っているなら、何かしら施してやってもいいだろうとは考えている」 「条件?」 「そう、彼我のね。さて、殺さない理由と生かす理由の有無を検証してみようか」 「…………………っ……」 「おや、ナイスタイミングかな? では、彼我の彼を確認してみよう。あー、アンニョンハセヨ?」 「普通に言ってください」 「…………だ、……ぇ」 「この界隈に群れを形成しているゆっくり、その長だ。初めまして。聞こえているかな?」 「…………ぅ……」 「そうか。では早速で悪いのだが、この縄張りから出て行ってもらえるかな。お前さんの存在は何かと物議を醸しているんだ」 「……べ…ぉの…」 「食べ物か。確かにその衰弱ぶりでは、自力で出て行けはしないな。しかし、こちらの台所事情も逼迫気味でね、その要求を満たすのはやや難があるかな。まあ、横にいる健啖な参謀は、是非とももてなしたいと言っているんだけどね。クリームと酢と塩を擦り込んだ上で」 「宮沢賢治じゃありませんよ」 「化け猫でなくて、化け饅頭だしな。──さて、人間、今のやり取りでお前さんを助けることが決定された。しばらく待っていてくれ」 「長、ちょっと待ってください」 「うん、手短にな、あの男が事切れる前に」 「私はまだ完全には理解できていないのですが」 「理解できたところまで話してくれ」 「人間の存在が問題になるのはわかります。何もせずに放置するのはありえません。特に群れの中でのことですから」 「そう、殺しもせずに死ぬのを待つのでは、虐待と変わらない。群れの教育上よろしくないな」 「しかし、そこから先がわかりません。助けられないならひと思いに介錯してあげるべきです。しかし、長は『助ける』と言った。『人間に渡せる食べ物はない』という台詞と共にです。矛盾していませんか」 「二点見落としているな」 「はい?」 「『彼我の彼の条件』は何かな」 「え、と、その話ですか。ええと」 「彼は殺されてしかるべき人間ではないようだ。よだれを垂らして飛びかかってくるようなら、むしろ話が早くて良かったのだけどね」 「正当防衛は使えない、そして彼の人柄は……。『彼我の彼における殺さない理由』はわかりました。私の目には、ただのお人好しにも映りますが」 「生命の危機に際しても、手軽に食えるゆっくりに手を出さないからな。特に参謀は食い出があるのに」 「長は煮ても焼いても食えませんけれどね。ともかく、彼は少なくとも生を弄ぶような人間ではない」 「そう、俺の基準で言えば、彼は殺したくない部類の人間だ」 「一つは片付きました。そして後一点、私が見落としているのは、『彼我の我における生かす理由』です。これがなくては、どんなに長が殺したくなくても、殺さざるをえなくなる」 「いや、何が何でも助けたいわけではないよ。助けられるから助けるのであって、そうでなければためらいなく殺すさ」 「やはり、見落としているのは食糧のことですね。それこそが彼を助けるものですから。しかし、だからこそわかりません。私の疑問符はどう外されるのですか?」 「単純なことだよ。まず参謀は俺の台詞を誤解している。俺は『難がある』と言ったのであって、『できない』とは言ってない」 「同じ事では? ギリギリの状態なのに、外部の者に譲渡する義理はありませんよ」 「非常時でもなければ食べない物があるだろう。与えるのはそれだ」 「……え? いえいえ、まさか。人間の食域はゆっくりのそれに比べて、格段に狭いはずです、少なくとも私たちの群れにおいては」 「今やそうなっているね。古参のゆっくりはみんな悪食のプロフェッショナルだからな」 「長がそう仕向けたんでしょうが、まったく。とにかく、群れの誰にも食べられないものが人間に食べられるはずがありません」 「それは事実だ。ただ何事にも例外があってな」 「例外、ですか?」 「さて、参謀。俺とくじ引きをしよう」 「本当に何とお礼を言ったらいいか」 「何度も言うが、気にしなくていい。成り行きでしたことだからな」 「そんなことはない。君たちは命の恩人だ。必ず借りは返すよ」 「いや、こちらとしてはお前さんが『何もしない』のが最善なんだ。気持ちだけ受け取っておく、とさえも言えない。ともかく、お前さんには早くここから出て行ってもらいたい」 「ああ、わかった。それからもう二度と群れには近づかないでおくんだね」 「そう願う」 「約束するよ。本当にすまないね、群れには食糧が無かったのに分けてもらって」 「本来は捨てるはずのものだ。そんなものを食べさせたんだが」 「だけど、そのお陰でこうして生きていられる。感謝するよ。わざわざ温めてもらって、暖も取れた」 「それは勘違いだな。加工したてだから温かかったんだ。いつもは廃棄するものだから、備蓄はない」 「あれは加工品の廃棄物なのか。なかなか美味しかったよ、素朴な味わいで。何て言う物なのかな」 「お前さんは丼物を知っているかな」 「ああ、鰻丼とか親子丼とか」 「では、鉄火丼も知っているね」 「『てっか』……? いや、初耳だよ。あれが?」 「まあ、具だけだがな。それもいらない部分を寄せ集めたものだ」 「そうか、あれが……。作り方を聞いてもいいかな。村に帰ったらもう一度食べてみたいんだ」 「残念だがそれは無理だ。人間と食料を争奪することになりかねない。だから、今回のことは他言無用とお願いしているわけだよ。察してもらいたいな」 「ああ、わかった。約束するよ。……貴重な食材なんだね」 「最寄りの村はこの先にある。お前さんが来た村とは別だが、冬が開けるまで世話になるといい。案内はできない。最近村人が妖怪に食い殺されてね、ゆっくりに対しても絶賛警戒中なんだ」 「ありがとう。お礼しか言えない自分が恥ずかしいが、心から感謝するよ。ありがとう」 「さあ、早く行ってくれ。『ここでは何もなかった』。いいな?」 「これにて一件落着と。さて、俺たちも昼食にしようか」 「………………」 「ん、どうした? 何か心配なのかな。大丈夫だろうさ、あの人間は。身体に差し障りがあるはずがない。栄養価も悪くないし、毒性なんてあるはずもないのは検証済みだ。現にあれだけ回復していたじゃないか」 「………………」 「味も香りも不快なものではなかったろう。感謝していたわけだしな、家畜人ヤプーほどじゃないにせよ」 「………………」 「それとも、彼が事実を知ることを畏れているのか? 鉄火丼を知らなかったんだ、幻想郷には海がないから、普通に生きている限りは一生知ることはないさ。だから、海亀のスープみたいなことにはなりえないよ」 「………………」 「それにしても、我々にとってはトラブルでも、彼にとっては運が良かったな。いや、運だけでは命を繋ぐことは不可能だったろう。最後まであきらめない根気、そしてくよくよと細かいことに囚われない良い意味での鈍さ。すなわち『運根鈍』が彼を救ったんだ。そして、彼が食べたのは──」 「それ以上は黙ってください」 「何だ、せっかくオチを付けようと思ったのに」 「冗談じゃないです! 何で私があんなこと!」 「おいおい、厳正なるクジ引きの結果じゃないか。正規の業務の外なのだから、俺と参謀にしかできないことだったわけだしな」 「一軒一軒回って、あんな、あんなお願い……っ」 「涙目になる程のことかな。ちょっと変な目で見られたくらいだろう」 「くらいじゃないですよ! くらいじゃ! あぁ、もう私どんな顔してみんなに会えばいいの……」 「明日から子供たちのヒーローだな」 「長っ!」 「じゃあオチを付けるぞ。彼が食べたのは」 「長ァッ!」 「駄目か? じゃあウンコ丼は止めて、ホカ便にしようか」 「いい加減にしてください!!」 「参謀だったらどっちがいい? アンコ味のウンコか、ウンコ味のアンコか」 「ッ! 失礼しますっ!!」 「あ、参謀! ちょっと待ってくれ! 参謀! おい! …………参ったな……」 「……最後はクソクラエと罵倒してほしかったんだが」 黒ゆっくり4 過去作 fuku2894.txt黒ゆっくり1 fuku3225.txt黒ゆっくり2 fuku4178.txt黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3732.html
※虐めじゃないかも 俺はゆっくりが嫌いだ 作者:古緑 俺はゆっくりが嫌いだ 俺にゆっくりする気なんて無い 朝から晩まで仕事で忙しい身だ でも別に殴ったり蹴ったりしたいわけじゃない 嫌いなだけだ 餡子嫌いだから食うのも嫌いだ 「ゆっくりしていってね!」 この台詞も好きじゃない どんなゆっくりも同じことを言う 俺の趣味はバスケットボールだし ゆっくりしたものはあまり好きじゃない 「こわいかおしてないでゆっくりしてけばいいのに」 こいつはどっから入ってきてんだよ ゆっくりれいむだか何だか知らねぇが そこは俺んちの庭だ お前の『ゆっくりプレイス』じゃないんだよ 何も無い庭だけどお前みたいなのがいると鬱陶しい 出て行け 「ゆっ?ゆっくりしていってよー!」 ほら!出て行け!まったく ああいうのが『ゆっくりの押し付け』ってヤツか ゆっくりしてる暇なんてないんだよ 今日はとっとと寝たいんだ 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …また入ってきたのか 門はしっかり閉めた筈なんだがな どうでもいいが俺はまだお兄さんって歳なんだよ いいや、こんなのに構ってる暇は無い 「ゆっくりしていってね!」 もう放っておく どうせ雨戸を閉めちまうんだ しつこいゆっくりセールスに付き合う気はねーよ じゃあな押し付け販売員 「おふとんでゆっくりしていってね!」 デカイ声だ 春が近いとはいえまだ朝は少し冷えるな 古い鉄の雨戸は冷たくて指が凍えそうだ 「ゆっくりしていってね!」 …何のつもりなんだおめーは 今都市部で話題の乞食ゆっくりか? だったらここに来たのは間違いだ 家には碌に飯なんて無いんだよ わざわざ乞食にやる気もないからヨソあたんな 「おじさんはよゆうがないね!」 家出るときついでに摘み出しとくか 鬱陶しい生物だ それにしても本当に余裕ないな 朝飯は駅前のコンビニでランチパックかな 「ゆっ?ゆっくりはなしてね!」 おい二度と家の門くぐんじゃねーぞ 帰ってきた時またそのツラ見せたらブン殴ってやる 「ゆっくりしていってよ…」 やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 変なのに構ってたせいでいつもより遅れてるじゃねぇか 急がないと 「なかなかとかいはなまりさね!す…す…すっきりしましょほおぉおお!」 「やべろおおぉおお!!れいばーあでぃずはゆっくりじねえぇえぇ!!」 あの野良ゆっくりありす まだ生きてたのかよ 散歩中の飼いゆっくりに襲いかかってやがる 「ばでぃぶっ!」 あ蹴られた 本当に見苦しい生き物だな あんなのまでいるからゆっくりは嫌いだ うあぁ疲れた 帰って柿ピービールが平日の唯一の楽しみです 「ゆっくりおかえりなさい!ゆっくりしていってね!」 「むししないでね!」 てめーどっから湧いてきてんだ不思議生物の特権か ブン殴るって言ったの忘れたのか 「おぉこわいこわい」 『プシュ』あぁイイ音 ん?やらねーからとっとと失せろ 家ん中には入れねーぞ 一歩でも入り込んだら蹴りくれてやる 「つんつんしないでゆっくりすればいいのに」 舐めてんのか?二度とここまで来れねーように 今度は車で 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …だいたいそのゆっくりって何なんだよ? それに俺をゆっくりさせるって昨日も言ってたな? 「ゆっくりはゆっくりだよ! おじさんはあさからばんまでぜんぜんゆっくりしてないね! たまにはゆっくりしなきゃいつかゆっくりできなくなっちゃうよ!」 お前がいると駄目だわ ビールが全然旨くねぇ 明日の朝一で町外れの山まで車で捨ててきてやる それがヤなら今夜中に失せるんだな 「ゆっくりよるをあかしていってね!」 やらねーと思ってんのか ナメやがって やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ ぽつぽつと大きくなる屋根を叩く音でふと目が覚めた まだ午前二時だ 明日の朝は雨かな もうザーザー音がするぐらい強い雨に変わってる まぁどうせ車で行く気だしどうでもいいや あのウザイ饅頭生物載っけてかなきゃだし そんな事を寝ぼけた頭で考えてると あのウザイ顔が困ってるような気がした 『ゆっくりは水に弱く雨に当り続けると死んでしまいます』 そんなどこかで聞いたような言葉が頭の中に浮かぶと 俺は布団から飛び起き 一階の雨戸まで急いで駆け下りていった 「オイ!」 「ゆっくりしてないねおじさん れいむはゆっくりできてるよ」 困った顔はさっき頭に浮かべた顔そのままだった 雨戸の外に雨を避ける場所は無く ゆっくりれいむの釣り上がっていた眉はハの字に曲がり リボンはびしょびしょになって濡れた髪に垂れていた 「………」 「ゆっ?」 俺はゆっくりが嫌いだ だけどその命そのものが嫌いなんじゃない 死にかけた命が目の届くところにいたら 手を貸してやりたいと思う事はきっと悪い事じゃない その命を助ける事で誰かが困る事もあるのかも知れない だけど命を救いたいと思う事自体はきっと悪い事なんかじゃないはずだ コイツの場合だったら玄関先を貸してやる事ぐらいいいだろう 起きたら雨は上がっていた 時計は7:35を示している あのウザイ生き物に関わっていたせいか 早起き出来なくなってる気がする こっから車で外れの山なんて行ってたら完全に遅刻だ 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり そりゃ挨拶なのかお前等の場合 なに我がモノ面で家の中跳ねてんだよ 昨晩拭いといて良かったわ 雨が上がったんならとっとと出て行きな 「おそとでゆっくりしていくよ!」 さてそろそろ行かなきゃな お日様も出てるし、たまにはバスなんか使わず駅まで歩いてくか まだまだ間に合うだろ 「ちょっとはゆっくりできるようになったみたいだけどまだまだだね!」 なんか満足そうだなお前 コイツどうしよう? まぁそのうちどっか行くだろ ゆっくり考えてきゃいいや それにしても生意気なヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 寒いから帰りはバスにした 柿ピーとビールの補充は忘れない 明日は休みだしアイツに影響されたワケじゃないが たまには家でゆっくり過ごすのも悪くないだろう 「ゆっくりしていってね! おじさん!あしたはゆっくりするんでしょ?」 すっかり庭に居着いてるなお前 ゆっくりの事は嫌いだし追い出してやろうと思ってたが こいつの騒音で文句言うヤツはこんな田舎にはいないし 家に帰った時誰かが声をかけてくれるのは悪くない ペットなんてつもりは更々ないが ただっ広いだけの庭に勝手に生かしておくぐらいいいだろ 疲れてっからもう雨戸締めて寝るぜ 「あまどさんこんばんわ!ゆっくりしていってね!」 馬鹿だなアイツは AM 10:00 完全に影響されてるな でも悪い気はしない どうせ今日はゆっくりしようと決めてるんだ 飯でも買いにいくか 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり …そういえばこいつと時間を気にせず顔を合わせるのは初めてだな 俺はゆっくりが嫌いだが話をするのが嫌いなワケじゃない ちょうどいい機会だし色々聞いてみるか お前さ、何で俺につきまとうんだ? 「なんどもいわせないでよね! おじさんをゆっくりさせるためだよ!」 それについては癪な事だが成功したようだな 本当に変なゆっくりだな 人をゆっくりさせようとするゆっくりなんて 古過ぎるゆっくりはもう化石レベルだぞ なんでそんなに人をゆっくりさせたがる? 「だれかをゆっくりさせるとれいむもゆっくりできるよ …それにこのせかいのみんなはゆっくりしてないよ」 この世界?お前はどこから来たっていうんだ? 「れいむはやまでゆっくりしてたら いつのまにかここにいたよ」 何言ってんだお前 ゆっくり語は理解出来ないね じゃあお前、どうしてこんな何も無い庭に住み着いてんだ? 何も食うもんないだろ? 「くささんもむしさんもたくさんいるよ?」 あぁ…手入れしてないからな そんなモンでいいのかよ 都市部の奴等で草なんて食うヤツはもういないのに お前好きなモノとかあるのか? 「ゆ?れいむはゆっくりするのがすきだよ!」 そうじゃねぇよ 食べ物ってことだ 今まで食ってきた中で一番旨いかったものとか、 あるだろ? 「だったらたいやきさんだね! でもかんたんにはてにはいるものじゃないよ! さとまでいかないともらえないものだからね!」 あっそ ちょっと出かけてくるわ 「おじさん!」 なんだよれいむ 「いっしょにゆっくりしようね!」 別にアイツが好きって言ったから 鯛焼きを買ってきてやるワケじゃない 俺は餡子の詰まった鯛焼きが大好きだからな 一つぐらい買って分けてやるぐらいならいいだろ それにしてもところどころワケの分からないヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ でも悪くない あんなに自然体のまま誰かと話すなんて 母が死んで以来かもしれない 鯛焼きなんて買うのは産まれて初めてだ スーパーの先に屋台があるからついでにそこで買ってくか ゆっくり歩いていこう それがさっきまでの事 今俺の目の前には頭から蔦を生やし 真っ黒になったゆっくりれいむがガラス窓の前で横たわっている かつての笑顔は苦悶の表情に変わり全く動かない ガラス窓の前で死んでいたのは家を守ろうとしてくれたのか? 抱き上げるともちもちと弾力のあった体は端の方からポロポロと崩れ落ちていった 呆然としたまま庭を見ると叢の陰に隠れた木製の塀に ゆっくりれいむぐらいの小さな穴がある ずっと庭なんて見てなかったから忘れてたが 俺が子供の頃に蹴って開けた穴だ いくら追い出しても入ってくるワケはこれだったんだ 『これ』をやったヤツもここから入ってきたんだ どうしてゆっくりれいむがこうなったのかは分かってる ゆっくりれいむの頭に成った黒い実の中に ゆっくりありすの実があるからだ この辺の野良ゆっくりありすなんて一匹しかいない さっきすれ違ったのがそいつだ 俺はゆっくりが嫌いだ 命を気紛れに奪う事は悪い事だと思っている しかし今から俺がやる事は間違っていないと思う 友を殺した仇を討つ事はきっと間違っていない 震える拳を握りしめ 仇の住処の公園に向かいながら俺はそう真剣に考えていた
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1688.html
※飼われて愛されているゆっくりがひどいことになります ※人間いじめ的な要素があります 人里に、仲睦まじい飼いゆっくりのつがいと愛でお兄さんの姿があった。 いや、本当に両者の仲は睦まじかったのだろうか? 見る者が見ればその関係は、かわいい愛玩動物に鼻の下を伸ばす青年に、 適当に媚を売り、飯炊き係として利用している醜い畜生、そのように映ったかも知れない。 何しろこのゆっくりども、物を盗む、壊すなどの悪さこそしないものの、 不遜な態度や物言いを繰り返し、飼いゆっくりバッヂを輝かせながら、村人の不快感を煽っていた。 悪さをしないのも、単に村人が自分達に罰を与える口実を作らせたくなかったからである。 その全てを見下したようなニヤケ面に村人は、躾不足だ、癇に障るなどと苦言を呈していたが、 飼い主とくれば、それは人間の被害妄想。動物の挙動をいちいち曲解しすぎだなどと返し、どこ吹く風だった。 確かに、それが犬猫の類であればそういう意見も納得出来る。 しかし奴らはゆっくりだ。人語を解し、人間に極めて近い表情を作る生き物なのだ。 そんな詭弁が通ってなるものか? ここにいる男、平凡な虐待者である鬼意山もそう思っていた。 「ゆっゆっゆっ。まりさがとおるよ!ばかなこどもはどいてね!!」 「ゆっ!おじさん、きたないおようふくだね!そんなものかわいいれいむにみせないでね!!ぷんぷん!!」 今日も村人の顔をしかめさせて回る、飼いゆっくりのまりさとれいむ。 週に何度か、飼い主の若者が仕事に出ている間は自由に散歩させているのだ。 このゆっくり、特別性根がねじ曲がっているわけではない。ありのままの自然な姿だ。 甘やかされて育っているため、自然体でありすぎるというのが難点と言えば難点か。 だがゆっくりに対する躾とは、痛い目に遭わせてそのような性根を矯正することである。 飼い主のお兄さんは、ゆっくりにそのような仕打ちをしたくはなかったのだ。 そのような心優しい人間もいれば、正反対の事を考える人間も世の中には当然いる。 (ああ、虐待したい……己の罪を判らせ、苦痛と絶望の中に叩き込みたい……) 物陰でゆっくりを見守る鬼意山は、心に空いた穴からどす黒いものが噴出すのを感じていた。 人間の庇護下に置かれ、更にはその人間をも見下し王様気分に浸っているド饅頭。 鬼意山ならずとも、村人達も本当はその場で叩き潰したいと思っている。しかし、奴らは飼いゆっくり。 単なる野良饅頭であればどう扱っても構わないが、人の物を壊すということは社会のルールに反する。 鬼意山といえど、そこまで虐待に全てを賭してはいなかった。 大体あんなものをかわいがる、愛でお兄さんも愛でお兄さんだ。 以前彼は愛でお兄さんに「ゆっくりは醜い生き物だ。可愛がるなんてやめて痛い目を見せたほうがいい」と説いたことがあった。 しかし当然というか、愛でお兄さんは呆れ顔で「君みたいな狭量で暴力的な人と一緒にしないでくれ」などと言ってきた。 鬼意山は逆ギレしかけたが、なるほどなるほど、確かに傍から見ればそうかも知れないと自らを戒めた。 だが、腐っていた心がゆっくり虐待によって救済され、彼の仕事面や健康面に多大なる好影響を与えていたのも事実。 彼は虐待に対する義務感、いや一種の恩義のようなものすら感じている変人だった。 だからこそ陰では鬼意山などと標榜し、世間のアウトローを気取っているのだ。 その鬼意山として、あのようなゆっくりを看過していいものだろうか。そんなはずがない。 (このルール、必ず抜け道がある……鬼意山の名にかけて、絶対に見つけ出してみせる!) 彼がその情熱を仕事に傾けていれば、年収が一桁違ったとさえ言われている。 しかし情熱というのは、基本的には転用不可能なものである。 「ゆ~、きょうもおさんぽたのしかったね!!」 「おいしそうなおやさいがいっぱいあったね。こんどたべにいこうね!!」 「だめだよ!!おにいさんがいじめられちゃうよ。そしたられいむたちがゆっくりできなくなるよ!!」 「ゆぅ~・・・ゆっ、おにいさんがごはんをたくさんくれるからがまんするよ!!」 「ゆん!でもきょうはおにいさんかえってくるのおそいね」 「ゆぅ~~・・・」 愛でお兄さんはその日急な残業を言い渡され、いつもより帰宅が遅くなっていた。 飼いゆっくり達の日々の暮らしといえば、おさんぽから帰って来るなりお兄さんにご飯をもらう、 食べたら遊んでもらう、遊んでお腹が減ったらおやつをもらう、おやつを食べたら寝る、 このルーチンワークである。しかしお兄さんのいない今日は、非常に手持ち無沙汰だった。 暇なゆっくりのやることと言えば一つである。 「ね、ねぇれいむぅ・・・おにいさんがいないうちに・・・」 「ゆぅん、まりさったらぁ・・・」 互いに気味悪くしなを作り、ぷにぷにと頬を寄せ合うれいむとまりさ。 「ゆっゆっゆっゆっ・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 やがて餅肌のこすれあうすりすりという音は、粘液の絡み合うネチャネチャという音に変わり、 れいむとまりさは顔を激しく上気させ、白目を剥きながらあらゆる体液を垂れ流しにしているようだった。 ゆっくりの醜悪なセックスである。 「んほおおおおぉぉぉぉぉっ!!れいむぅぅぅ!!ずっぎりずるよぉぉぉぉぉ!!」 「ぎてっきてっまりざ!!れいぶにまりざのあがちゃんにんっしんっさせてえええええ!!すっきりー!」 「ぼおおおおおずっぎりーー!!れいぶもういっかいざぜでえええええ」 「いいよまりざあああああぁぁぁ!!いっぱいあかぢゃんづくろうねぇぇぇぇ!!」 この姿を見れば、愛でお兄さんと言えども顔を顰めて愛想を尽かしてしまうかもしれない。 それほどの醜さだったが、運良くというべきか、お兄さんはまだ帰って来なかった。 代わりに、戸外にまで響くその嬌声に聞き耳を立てる変質者が一人。鬼意山である。 ゆっくりが果てたのを確認すると、彼は口元を歪めてその場を立ち去った。 「ただいまー」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「まりさにごはんをちょうだいね!!」 「れいむにはおおめにちょうだいね!!」 「はーい、わかりましたよ……っと?」 残業を終えた愛でお兄さんが帰宅すると、そこには愛しの飼いゆっくりがお出迎え。 というより、飯の催促。お兄さんもニコニコ顔でご飯の準備に取り掛かろうとする。 しかし仰天させられたのは、れいむの頭に生えた数本の茎である。 「れいむ、これは一体……?」 「ゆっ!れいむとまりさのかわいいあかちゃんだよ!!」 「おにいさんはこんなにかわいいあかちゃんがみられてしあわせだね!ゆっくりかんしゃしてね!!」 母体が充分な栄養を蓄えているからだろうか、赤ちゃんの形成スピードは速く、 三十匹はいるかという赤ちゃんが今夜中には生まれそうである。茎にぶら下がった赤ちゃんは、寝息を立てながら揺れている。 かわいいれいむたちに優しくしてくれるお兄さんなら、きっと赤ちゃんを見たら大喜びだろう。 そうすればもっと自分達はゆっくりさせてもらえるに違いない。そんな期待を込めてお兄さんの顔を見上げるゆっくり。 しかしお兄さんは、いつも通りのニコニコ顔でありながらも、眉間に皺を寄せていた。 「う、うん! とっても可愛い赤ちゃん達だね。見せてくれてありがとう!」 「でしょ!ゆっくりしたいいこにそだつよ!だからおにーさんもいっぱいごはんちょうだいね!!」 「そうだね。頑張るよ、出来るだけ……」 いつもは自分達とハキハキ会話をしてくれるのに、歯切れの悪い語尾を残し、肩を落として去っていくお兄さん。 れいむは直感していた。このままだと自分達はゆっくり出来なくなる、と。 元々この二匹は、お兄さんの家に勝手に侵入して荒らし回っていたのを、厚意で飼いゆっくりにしてもらったのだ。 だかられいむには、お兄さんの蓄えがあまり多くはないことを予め知っていた。 愛でお兄さんはお人好しゆえ、少し要領が悪い所があり、稼ぎはあまり良い方ではなかったのだ。 この上これほど多くの赤ちゃんが生まれればどうなるだろうか? 取り分が減る―――こういった直感がゆっくりに働くことは稀であり、その点れいむは賢明なゆっくりだった。 晩御飯を食べた後、身重のれいむは遊ぶわけにもいかず、お兄さんも仕事に疲れて寝床についてしまった。 まりさはもっと赤ちゃんを自慢したかったが、お兄さんが寝てしまってはやることが無いので、自分達も寝ることにした。 静まり返った家の中で、赤ちゃんゆっくりの小さな寝息と、れいむとまりさのひそひそ声(ゆっくり基準)が響いた。 「ゆ~ん!れいむ、あさまでにはあかちゃんうまれそうだね!おにーさんをびっくりさせようね!! きっとたくさんあさごはんがもらえるよ!!」 「まりさ、ゆっくりきいてね。ちょっとあかちゃんがおおすぎるよ!」 「ゆゆっ!?れいむなにいってるの?あかちゃんいっぱいいたほうがゆっくりかわいいよ?」 「でもあかちゃんたちにごはんをあげたられいむたちのぶんがなくなるよ!! おにいさんはそんなにいっぱいごはんをもってないよ!これじゃゆっくりできないよ!」 「ゆゆっ!?なんでぞんなごどいうのお゛ぉぉぉぉぉ!!れいぶがあかちゃんいっぱいほじいっでいうがらあぁぁぁぁ!!」 「へんだいのばりざがなんどもすっきりしようとするがらでしょおおぉぉぉぉぉ!!」 ついつい大声で口論する二匹だが、お兄さんが「う~ん」と言いながら寝返りを打ったのを見ると、 びくりと全身を震わせ、再び家の中は水を打ったように静まり返った。 「ゆ・・・わかったよれいむ。でもどうするの?」 「ゆっくりきいてね。おにいさんがおきてくるまえに、あかちゃんをすこしすてようね」 「ゆ゛っ!?」 「こんなにいっぱいいたらすこしぐらいへってもきづかれないよ。ゆっくりりかいしてね」 それはれいむの餡子脳では四以上の数字を数えられないというだけのことだったが、 人間にも当然のごとくそれを当てはめてしまう辺りも餡子脳たる所以である。 「ゆっ!れいむはあたまいいね!!」 「はやくしないとみんなうまれちゃうよ。ゆっくりすてにいこうね」 二匹はお兄さんが作ってくれたゆっくり用の出入り口から外に出て、 お家から離れた原っぱへと向かった。 ここに捨てられた赤ちゃんゆっくりは、自力では帰って来れまい。野犬やれみりゃに食べられるかも知れない。 赤ちゃんたちの身体はもうほとんど出来上がっていると言ってよく、すぐに切り離しても元気に動き出すことだろう。 「れいむ、あたまをゆっくりさげてね!」 「ゆっ」 れいむが顔を丸めるようにして頭の茎を下に降ろす。まりさは赤ちゃんの中でも特に大きく、 よくごはんを食べそうな子を選ぶと、起こさないように優しく口に含み、茎からぷちりと切り離した。 「ゆっ」と小さく呻いたものの、まだゆっくり寝ていたいのか、地面に下ろしても目覚める気配は無かった。 「だいじょうぶそうだね!」 「このちょうしでいくよ!!」 一匹切り離す度に、自分の食べられるごはんが増える。そう考えるとまりさは、ついつい多めに赤ちゃんを捨ててしまった。 れいむも頭の茎が軽くなるたびに、増えていく自分のごはんを想像して口によだれが溢れてきた。 どちらにせよ今まで食べていた量よりは少なくなるだろうに、不思議な話である。 結局引き揚げる頃には、半分近い赤ちゃんゆっくりがその場に捨てられていた。 「ゆん!これだけすてればだいじょうぶだよ!」 「あしたはのこったあかちゃんとゆっくりしようね!!」 「おにいさんにおいわいぱーてぃーをひらいてもらおうね!!」 「あかちゃんがへったから、まりさたちがおなかいっぱいになれるね!ゆっくりできるよ!」 仕事を終えた二匹は、軽い足取りでお家へと帰っていく。 野ざらしになった捨て子のゆっくりたちは、親達の凶行に気付く様子もなくすやすやと寝ている。 「クク……ククキキキケケケケ……」 そこに近付く影が一つ。鬼意山であった。 彼が最近、一体いつ寝ているのか? それは誰も知らない。 「う~ん……もう朝かぁ」 「「さん、はい!!」」 「「「「「しぇーの、ゆっくちちていっちぇね!!」」」」」 「うわっ、何だい!?」 起床した愛でお兄さんを待っていたのは、いつもよりも多く甲高い声。 誕生した赤ちゃんゆっくり達が、笑顔でお兄さんを取り囲んでいた。 「れいむのあかちゃんたちがうまれたよ!!」 「ゆゆん!ゆっくりかわいいでしょ!!」 「「「「おにーしゃん、かわいいれいむ(まりさ)たちとゆっきゅりちてね!!」」」」 「あはは、皆よろしく! ゆっくりしていってね!」 昨晩はつい家計の心配をしてしまったが、可愛い赤ちゃんたちを目の当たりにすると思わず頬が緩む。 赤ちゃんたちの分も自分が頑張れば良いんだ。そんな気持ちで仕事に臨めそうだった。 親ゆっくりが自分で餌を取りに行けば良い話なのだが、れいむとまりさには元より、お兄さんにもそんな発想は無かった。 一通り破顔したところで、ん、とお兄さんは首を傾げる。 「れいむ、昨日見た時より赤ちゃんが少なくないかい? まだ他にもいるのかな?」 「ゆっ?もとからこれしかいないよ!!」 「お、おにーさんあかちゃんのかずもかぞえられないの?ばかなの?」 「うーん、そっか。疲れて見間違えたかな? まあいいや。よおし、お祝いに朝ご飯は豪勢に行くか!」 「「「「「ゆゆ~~~ん!!!」」」」」 何とか誤魔化し通せた親れいむと親まりさは、内心ホッとしながらお兄さんの作ったごはんをぐちゃぐちゃと平らげた。 昨晩、もう少しお兄さんに赤ちゃんを自慢していたら危なかったかもしれない。怪我の功名というやつだ。 その後、赤ちゃんのお披露目にゆっくりみんなで散歩に出かけた。村人達の訝しげな視線はかわいい赤ちゃんに釘付けだった。 その日の午後には、お兄さんが店で買って来たバッヂが赤ちゃん全員の髪飾りに付けられていった。 「ゆ~~ん・・・ゆ?ゆっきゅりちていってにぇ!」 「ゆっくちゆっくち!」 「ゆ?おかーしゃん?おとーしゃん?」 「ゆゆ・・・ここどこにゃのおぉぉぉぉ!!」 「「「「ゆあぁぁぁぁぁん!!」」」」 捨てられた赤ちゃんゆっくり達は、どことも知れない薄暗い場所で目を覚ました。 茎で寝ている時、自分達に餡子を送り込んでくれていたお母さんの姿は無い。 頼れるもののいない恐怖に、泣き出す赤ちゃんたち。 と、突然辺りが明るくなる。 赤ちゃんたちがいたそこは、簡素な木箱のようなものの中だった。 ゆっくりの跳躍力では超えられないほどの壁が四方にそびえていたが、広さは赤ちゃんが暮らすには充分だ。 わけのわからない状況に戸惑っている赤ゆっくりたちに、一つの声が聞こえてきた。 「みんな、ゆっくりしていってね!」 「「「「ゆ?ゆっくちちていってにぇ!!」」」」 姿は見えないが、生まれて初めて聞く声。 ゆっくりの声では無いようだが、その柔和な響きに、赤ちゃんたちは束の間の安心感を得られた。 「僕は君たちのお母さんに頼まれて、しばらくお世話をさせてもらうことになったんだ。 この中に居ればいっぱいゆっくり出来るから、泣かないで安心してね!」 「ゆゆ!ゆっくちできゆの?」 「おにーしゃん、まりしゃおなかがしゅいたよ!!」 「れいみゅもおにゃかすいたー!!」 「ごはんをたべさせてね!!」 「ちょっと待ってね、いまごはんを中に入れるよ!」 声がそう言うと、箱の壁に穴が開き、さっとお皿が差し入れられた。 その上に載っているのは大量の餡子。普通の赤ゆっくりが生まれて最初に食べるのは、 親の餡子が詰まった茎なので、相応しい食事と言えた。 「ゆゆっ!いいにおいがしゅるよ!!」 「まりしゃこんにゃにたべられないよ~!」 「れいみゅもいっぱいたべゆよ!」 「むーちゃ、むーちゃ、ちあわせ~!!」 「あまあま~♪ とってもおいちいよ!」 「とってもゆっくちできるよ!!おにーしゃんありがちょう!!」 お腹がいっぱいになった赤ちゃんたちは、箱の中で飛びはねて遊び始めた。 よく見れば箱の中には、そろばんやスーパーボールなど、楽しそうなおもちゃがいくつもある。 それらでゆっくり遊んでお腹が空くと、またご飯の乗ったお皿がすっと差し入れられる。 夜になって疲れて来ると、明かりが消えて眠りやすい暗さになる。 自分達のお世話をしている人物の姿は全く見えなかったが、赤ちゃんゆっくり達は、 それはきっと自分達をゆっくりさせるために現れた神さまのような存在なのだろう。そう思いながら眠りについていた。 二週間後、お兄さんの家に生まれた赤ちゃんゆっくり達もソフトボール程度の大きさに成長し、 子ゆっくりと言えるほどの大きさになっていた。 赤ちゃんの為にお兄さんが発起したこともあり、稼ぎは若干増え、何とかみんなで毎日満腹になれていた。 お昼の散歩をする一家の姦しいことは、公害レベルに近付いていた。 ものの分別が付かない子ゆっくり達は、人の野菜や花壇のお花を勝手に食べたりして怒られていたが、 その度に親まりさや親れいむが出て行って、「あかちゃんのやったことだよ?ばかなの?」などと仲裁していた。 「ゆゆっ!かわいいあかちゃんをつくってほんとうによかったね!!」 「おにーさんのごはんもまえよりおいしくなったよ!」 「これからもずっとゆっくりできそうだよ!」 「「「「おかーさん、おとーさん、いっしょにずっとゆっくりしようね!!」」」」 「おにーさんもいっしょにゆっくりさせてあげるね!!」 そんな風に寄り添うゆっくりの家族を、愛でお兄さんは微笑ましいといった表情で眺めていた。 たまに悪戯のとばっちりで自分が叱られることもあったが、この笑顔を見るためなら安いものだと思った。 赤ちゃんの為に仕事も頑張れるようになったし、おいしいごはんを出す為に料理も上手くなった。 趣味を持たない彼だったが、ゆっくり達のおかげで人生が充足していくのを感じていた。 ある日の夕方、おさんぽから帰って来たゆっくり一家に、いつものようにごはんを出すお兄さん。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 「はふっはふ、うっめ!これめっちゃうっめ!!」 「ぐっちゃぐっちゃ」 「おいしくてゆっくりできるよ!!」 「ゆーん、もっとたべたいよ!!」 べちゃべちゃと下品に食べ散らかす家族だったが、お兄さんはむしろその自然で奔放な有り様が好きだった。 ニコニコしながら眺めていると、何かの違和感に気付く。 はて、子ゆっくりの数が少し多いような? 確かれいむとまりさは同数だった気がするが…… そう思って数え直してみる。しかし違和感とは裏腹に、思っていた通りれいむとまりさは同数だった。 ふむ、見間違いか。これだけ元気なのが沢山いると、目で追うのも大変だもんなあ。 そう切り上げ、お兄さんは読書をするため自室に戻っていった。 「おかーさん!むしさんつかまえたよ!」 「ゆゆっ!いいこだね!おかあさんはおなかすいてるからたべさせてね!!」 その時、一匹の子まりさが物陰から虫をくわえて飛び出してきたことには気付かなかった。 次のおさんぽの日。晴れ渡る空の下、まりさはお気に入りの石段の上でゆっくり日向ぼっこをしていた。 まりさがそこを占領している間、村人はそこを避けて通る。道にしゃがみこんでるヤンキーみたいな邪魔さだった。 目を細めてうとうとしていると、一匹の子れいむが擦り寄ってくる。 「ゆゆ~ん!」 「ゆ~・・・?どうかしたの、れいむ・・・?」 寝ぼけ眼に、その子れいむはあまり見覚えの無い顔のような気がした。 といっても、ゆっくりの顔なんてどれも似たようなものなのだが。 しかし髪飾りについたバッヂですぐに自分の子供だと解った。 自分の子供の顔も覚えきれないなんて……ちょっと子供を作りすぎたのだろうか。 まあ、いっぱいいるに越したことはないよね。親まりさはそう思考を停止させた。 「おかーさん、れいむはうまれてきてしあわせだよ!!」 「ゆん・・・まりさもかわいいこどもがいてゆっくりしあわせだよぉ・・・」 「ゆっゆっ・・・おかーさん、ずーっといっしょにゆっくりしようね!!」 「そうだねぇ、ゆっくりしようねぇ・・・」 そのまましばらくぬくぬくと寄り添っていたが、日が暮れて石段が冷えて来たので、一緒にお家に帰ることにした。 それから一週間の間に、三回ほどおさんぽに出かけた。 そして晩御飯の時間を迎えるたびに、ゆっくり一家には不満が増していくのだった。 「おかーさん、れいむまだごはんたべたいよ!」 「ゆー、おなかすいたよ!これじゃゆっくりできないよ!!」 「おにーさん、ぜんぜんごはんがたりないよ!!もっとたくさんたべさせてね!!ぷんぷん!!」 「おにーさんはかわいいれいむたちをおなかいっぱいにするぎむがあるよ!!」 「あれ? 足りなかった? ごめんごめん、今作り足すよ」 身体を膨らませて怒りを表現するゆっくり達。ごはんが足りないというのだ。 お兄さんとしても、馬鹿にならない食費、きっちり量は計算して出していたつもりだったのだが、 おさんぽに出て身体をいっぱい動かしていたせいか、子供達の成長が思ったより速かったと見えた。 多少収入は増えたとはいえ、その分食い扶持も増えているので家計は苦しい。 しかし今や人生の希望となったゆっくりたちを飢えさせるわけにもいかない。 苦労して世話をした分だけ、ゆっくりは素敵な笑顔を返してくれる。悲しむ顔は見たくない。 仕方なく、お兄さんは収入が増えるまで自分の食費を切り詰め、身の回りのものも少し処分することにした。 子ゆっくりがこっそり遊んでいた大好きなサイコロなどのおもちゃも、いつの間にか売られていた。 「ただいまぁ~……」 「ゆっ!おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「ごはんをちょうだいね!」 「まりさとあそんでね!!」 「う、うん、ちょっと待っててね。今ごはん作るから……」 更に一週間も経つと、子供達が大きくなったためか家は手狭になってゆき、要求されるごはんの量も更に増してきた。 お兄さんはどんどん残業を増やし、少しでも給料の足しにしようとしていた。 帰って来れば疲れ果て、手の込んだ料理を作る気力も無ければ、ゆっくりたちと遊ぶ体力も無い。 急に遊んでくれなくなったお兄さんにゆっくり一家は不満顔だったが、 すぐに家族同士で楽しそうに遊び始め、それを見たお兄さんも安心して眠りにつくことが出来た。 自分が少しぐらい苦労しても、ゆっくり達がゆっくりすることが出来れば…… 眠りの時間は瞬く間に過ぎ、また早朝からお兄さんはふらふらと仕事に出かけるのだった。 ある雨の日。大好きなおさんぽにも出られず、お兄さん家の中で跳ね回って遊ぶゆっくり一家。 何だか狭苦しく、密度の高さから蒸し蒸しと暑くなってくる。 朝ご飯も何だか物足りなく、膨れないお腹が未だにきゅるきゅると言っている。 生まれた時こそ小さくてかわいい赤ちゃんだったが、大きくなった今では、親まりさには邪魔だとすら感じられていた。 自分で食べ物をやって育てたわけでもない子供達に対するゆっくりの母性本能など、その程度のものだった。 そんな親の気持ちを知る由もなく、狭い家でも伸び伸びと遊ぶ子ゆっくりたち。 大きくなった体があちこちにぶつかり、色々なものが倒れたり破けたりした。 しかし子ゆっくりたちは、生まれてからほとんど叱られたことがないのだ。それが悪いことなどとは思わない。 「ゆ、ちょっとこどもをつくりすぎたね・・・」 「れいむ!これじゃぜんぜんゆっくりできないよ!!」 「ゆ!?まりさがあかちゃんつくろうっていったんでしょ!ぷんぷん!」 「ゆぐぐ・・・でもどうせならもっとあかちゃんをすてておくべきだったね・・・」 「そうだね・・・」 子供達が聞いたら「どぼじでぞんなごどいうのおぉぉぉぉ!!?」と泣き叫ぶこと必至な会話をする親二匹。 ふと、れいむが「ゆ?」と首を傾げ、何か違和感の正体に思い当たったような顔をしていた。 「ゆ・・・ねぇまりさ、なんだかこどもたちがおおいよ!」 「そんなことわかってるよ!いまはなしたばっかりでしょ!ばかなの?」 「ちがうよ!あたまがいいれいむはゆっくりきづいたよ!さいしょのころよりふえてるよ!!」 「ゆ!?なんでえぇぇぇ!?」 訳が解らないといった顔で部屋を見回す親まりさ。しかし沢山の子ゆっくりたちが跳ね回っており、 四匹目のゆっくりを見たら一匹目を忘れる程度のまりさの脳では、とても数など数え切れなかった。 しかし確かに多いような……そんな気もしていた。 「みんな!!ゆっくりあそぶのやめてね!!」 「「「「「ゆ?」」」」」 「おかあさんたちのまえにゆっくりならんでね!」 親れいむは部屋中に響き渡る大声で号令をかける。子ゆっくり達は、渋々遊ぶのをやめて集まってくる。 「どうしたの?おかーさん」 「ゆっくりおいしいものくれるの?」 「おさんぽいくのー?」 「ちがうよ!ゆっくりきれいにならんでね!!」 まりさ種を一列、れいむ種を一列に並べ、「ゆっ、ゆっ、ゆっ・・・」と横から順々に数えていく親れいむ。 そして最後まで数え終わった時「ゆゆっ!」と驚愕を露にする。 「なんだかこどもたちがすごくおおいよ!!」 「なんでちゃんどかぞえられないのおぉぉぉぉ!!れいぶのばがああぁぁぁぁ!!」 頭に疑問符を浮かべる子供達。このバカ親達が何をやっているのか解らない。 しかし子供が増えているような気がするという得体の知れない不安に囚われている親達にとって、 子供の数を正確に数えられないというのは何よりもどかしく、恐怖なのであった。 子供が増えれば、自分の分のごはんが減る。原因が解らなければ、ごはんの減少に歯止めはかからないのだ。 早々に限界を迎えたれいむの餡子脳はオーバーヒート寸前だった。 そもそも、気付くのが遅すぎたのだ。子ゆっくりの数は既に最初の二倍近くなっていたのだから。 とはいえ愛でお兄さんとて、仕事に追われていたとはいえ、じわじわと巧妙に追加されていく子ゆっくりには気付けなかった。 それもどうかとは思えど、餡子脳に気付くことが出来なくても仕方がないのかも知れない。 「ゆゆ?おかーさんおねーちゃんたちなにしてるの?ゆっくりできるあそび?」 「ゆ゛っ!?まだふえだあああああぁぁぁ!!!」 部屋の隅から一匹の子れいむが這い出てくる。単にかくれんぼをしていて、呼び出しの時に出て来損ねただけなのだが、 半狂乱の親れいむは、どこからともなく沸いて出たゆっくりが自分のごはんを奪いに来たという妄想に囚われ、 現れた子れいむに駆け寄っていき、渾身の体当たりをぶちかましていた。 「ゆ゛べっ!?ゆぎゃっ!おっ、おがっ!!」 「なんでふえ゛るの゛おぉぉぉぉぉ!!これいじょうれいむのごはんたべないでえぇぇぇ!!!」 激しい体当たりを繰り返す親れいむ。子れいむが何度も壁に打ち付けられ、全身の傷から餡子が漏れ出す。 徐々に物言わぬ餡塊と化していく子ゆっくりから、甘い匂いが漂い出した。 「ゆっ?あまあまのにおいがするよ!!」 「おやつだね!!ゆっくりたべるよ!!」 「ゆっくりおなかすいたよ!!」 何匹かの子ゆっくり姉妹が列を抜け出し、周囲に飛び散った子れいむの餡子を食べ始める。 親れいむの暴行が陰になっていて見えなかったため、それが姉妹の死骸だなどとは気付かない。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」と言いながら、涙を流して喜びに咽んでいる。 この姉妹達もまた、お腹が空いていたのだろう。 しかしふと我に返った親れいむは、その状況を見てまたも狂乱していた。 「ゆゆっ!?れいむたちなにやっでるの゛お゛おおおおぉぉ!! な゛んでかぞぐをたべちゃう゛のおおぉぉぉぉ!!!おねえざんでじょおぉぉぉぉ!!?」 「「「「ゆゆうぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」」」」 自分で潰しといて何をという感じだが、親れいむは激怒して家族食いの子供達を叱責する。 その様を見ていた親まりさは、何か閃いたように頭上に電球を光らせた。 「いいことかんがえたよ!」 「ゆっ?なあにまりさ?いいことって?」 「おかーしゃん、いいことってなあに?れいむもゆっくちちたい!」 親まりさの隣にいるのは、姉妹でも一番小さい末っ子の子れいむ。 親まりさはそのれいむを笑顔で一瞥すると、軽くジャンプしてプチッと踏み潰した。 平然と家族を殺した夫の姿に、またもや親れいむ大混乱。 「ゆ゛うぅぅぅぅぅ!?まりざなんであがぢゃんごろずのおぉぉぉぉぉ!!?」 「こうして・・・」 そしてぺちゃんこの死体になった子れいむをぺろりと口に入れると、 むーしゃむーしゃとやって飲み込んでしまった。その双眸は据わっていた。 そして唄うように宣言する。 「いらないこをごはんにすれば、おうちはひろくなるしおなかもふくれるよ!!」 「ゆ!?・・・・ゆ、そうだね!!」 「「「「「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅう!!!?なんでおがあざんだぢぞんなごどいうの゛お゛おぉぉぉぉぉ!!?」」」」」 「うるさいよ!おまえたちのおかげでおかあさんたちのごはんがへっちゃったんだよ! いつのまにかふえてるこどもなんてかわいくないよ!どんどんたべてへらすよ!!」 「「「「「い゛ぎゃああああああああ!!!」」」」」 子供が知らないうちに増えていく、ごはんが日に日に減っていく恐怖、そしてこの狭苦しさによる蒸し暑さと酸欠。 小さな要因がいくつも重なり、親れいむと親まりさの脆弱な精神は破綻をきたしていた。 増えすぎたゆっくりの群れが破綻して始まるものといえば、殺戮である。 「い゛ぎいぃぃぃぃぃ!!おがあざ、つぶっ、ざっ、にゃびっ、ぎぇ、びゅっ」 「ゆ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!ゆ゛あ゛あああぁぁぁぶぎゅ」 「あああああああこのれいむをつぶしていいからまりさはだずげでねぇ!!まりさはたすけてねまりさはたすけたすびょ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「どぼじでごんなごどにいいいいいぃぃぃぃ!!」 「じねえ゛えええぇぇぇ!!ごどもをだべるわるいおやはゆっぐりじないでじねぇぇぇぇえ!!!」 「おにいじゃああああああんん!!!ひどいおや゛をゆっぐりごろじでねぇぇぇぇじょび!」 「おねえちゃんおいしい!!」 「さすがまりさのこどもだね!とってもあまくておいしいよ!!」 充満する餡子の匂いに刺激されたのか、姉妹同士でも食い合いが始まっていた。 最後に残るゆっくりは何匹になるのだろうか。親しか残らないかもしれない。四匹ぐらいは残って欲しいなあ。 そんなことを考えながらその男、鬼意山は小窓から家の中を覗きながら、餡子の匂いを嗅いでいた。覗きは犯罪である。 何故子供が増えたのか? とても簡単なことである。 最初に親達に捨てられた赤ちゃんたちを男がこっそり回収し、育てていた。 そしておさんぽに出てくる一家を観察し、同じタイプの飼いゆっくりバッヂを購入して拾った赤ちゃんに取り付けた。 おさんぽの最中、子ゆっくり達は親から離れて遊んでいることも多かったので、 適当なところまで育った捨て子ゆっくりを、そこに一匹ずつ紛れ込ませていったのだ。 何度か親ゆっくりの姿を見せたり、子ゆっくり達とさりげなく遊ばせたりするなど、 自然に家族に溶け込める為の教育は万全にしていた。 元々が同じ茎で育った姉妹達だったので、馴染むのは早かったようだ。 子ゆっくりの成長時期に合わせて送り込んでいったので、多少部屋が狭くなっても子供が成長したからだとしか思えず、 ただでさえ多いゆっくり数に一匹プラスされている、などとは気づき難いようになっていた。 そして更に、狭い村社会だ。愛でお兄さんの収入状況などすぐにわかってしまう。 なかなか頑張っているようだったが、二倍にも膨れ上がった家族を養い切れるわけもなく、 浅ましいゆっくりどもは遠からず痺れを切らすだろうと思っていた。そしてこのざまである。 ゆっくりの家族を奪うのは、ルール違反……ならば逆に増やすのはどうか? そんな鬼意山の発想から考えられた、これは実験であった。 増やすと言っても、居るべき場所に戻しただけという認識だったが。 自分のしたことを正直に愛でお兄さんに話しても、まあ良い顔はしないだろうが……強く非難も出来ないだろう。 思えば自分が虐待に目覚めたのも、飼っていたゆっくりのおぞましい姿を見せ付けられ、幻滅したからだった。 愛でお兄さんも同じ道を辿るだろうか? それともこれに懲りずにゆっくりを愛し続けるのだろうか? どちらにせよ、強く生きて欲しいものだ…… 今までのように、ゆっくりなんかに振り回されないぐらいに強く。 餡子塗れになった部屋の中を一瞥すると、鬼意山はそのまま森の中へ去っていった。新たな虐待対象を探しに……。 「はっ、はっ、はっ、はっ……」 雨にぬかるんだ道を、傘を差した愛でお兄さんが小走りに駆ける。 その顔には、久々に心の底からわきあがってくる笑みが浮かんでいる。 最近の頑張りが認められ、今日昇給を言い渡されたのだ。 これで残業を減らし、ゆっくり達と遊んでやれる時間が増える。 更に、小脇に抱えた包みの中には職場でもらった麩菓子の詰め合わせ。 自分で食べてみたところ非常に甘くておいしく、是非ゆっくりたちにも食べてほしいと思った。 最近、おやつをあげられてなかったからな。久しぶりに甘いお菓子を食べてもらい、 幸せそうな笑顔を見せてもらいたい。あれだけの子供がいれば、きっと幸せも何十倍だろう。 そんな光景を想像しただけで、ついつい目じりが下がってしまう。 朝ご飯もろくろく作ってやれなかったから、お腹が空いてるかもしれないな。 早く帰って、一緒にゆっくりしてやろう。じきに雨も上がる。 ―了― このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/611.html
※ネタがかなり多めです。合わない方にはかなり合いません。 ※物凄く長いのでゆっくりできる時間があるときにどうぞ ※ドスネタとスレネタ同人ネタ少々、原作キャラ登場、俺設定有 ※ジャンル:虐、性、家、制、環、薬、共、料、ネタ 2008年8月17日 そいつは有り触れた景色に突然現れた。 もう一人の自分ではなく『ゆっくり』が現れた……。 「ただいまー…といっても誰もいないけどな」 俺は自嘲気味に呟くと背中の重荷を玄関に下ろした。 ぱんぱんになり少し広がったリュックの口から色取り取りの本が見える。 いい歳もして彼女の「か」の字もないオタクライフを満喫しているのは世間的に見ると悲しい事だが、大量の同人誌を見ると自然と顔がにやけてしまう。 こういう人生も悪くは無いなと思えてくる。 同人誌の整理も早々に済み、今日も今日とてパソコンをつける。 もちろんチェックするのは「ゆっくりを愛でるスレ」だ。 東方のキャラをモチーフにした1頭身の饅頭のような生物。 「ゆっくりしていってね!!!」というキメ台詞とともに何ともいえない愛くるしい表情をする。 ああ、あのやわらかそうなほっぺをぷにぷにしたい……。 体を洗ってあげて「すっきりー♪」とした顔を見たい……。 軽く口づけをして照れる顔を見たい……。 振動を与えて快楽に溺れた顔を見たい……。 ああ……想像しただけでご飯3杯は軽くいけるな……。 こんなに心酔しているからこそゆっくりを虐めて遊ぶ人が信じられなかった。 「愛でるスレ」を探していていつも目に入る「虐待スレ」。 このスレではゆっくりがどうやって甚振られて殺されると面白いかを日夜研究しているのだ。 そして恐ろしい事にこのスレはかなり高い回転率をほこっている。 気持ち悪い以外の何物でもない。 こんなかわいいものを虐めるなんて人間としておかしい。 きっとここにいるような奴が将来殺人事件を起こしたり、誘拐事件を起こしたりするのだろう。 おお、こわいこわい。 いつもなら華麗にスルーするのだが今日はお気に入りの本を入手できて気分も良かったので戯れに虐めスレを覗いてみることにした。 「…反吐が出るな」 やはり見るべきじゃなかった。 そこでは愛でスレで開発されたドスまりさがいいように改悪されて弄ばれていた。 『信頼のリボンってあるけどあれって手下に襲わせて奪ってるんじゃないのw』 『あっちのドスまりさの方が信頼できるよって裏切られるのも面白いなw』 だめだこいつらはやくなんとかしないと…。 そう思った後の俺の行動は早かった。 荒らそう。 こんなクズのいるスレは荒らしたほうが世の中のため…いや、ゆっくりのためになる。 更新 更新 更新 … …ほらもう食いついてきた さすが弱いもの虐めしか出来ない集団だ。 スレは俺の書き込みから一気にカオスになった。いいざまだ。 ゆっくりを虐めた結果がこれだよ、と俺はお決まりの台詞を一仕事終えたスナイパーのように吐く。 もっと荒らしてやろうと思ったが朝からの遠征に疲れを感じていた俺の身体は徐々にまどろみに襲われていった。 こんな腐った人間と関わる事は今後ないだろう。 墜ちゆく意識の中で俺はそう思っていた。 「………くり……てね」 「こ…ゆ………………るね」 自分しかいないはずの部屋から誰かの声がする 泥棒かと言う考えが頭を一瞬過ぎったが声がおかしい 人間の言葉だがどこか違和感がある 俺はパソコンに向かって突っ伏してた重い身体をゆっくりと後ろへ向けた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~♪」 「あまりひろくないけどここはすごくゆっくちできるね~」 「おかあしゃん、れいみゅおにゃかがしゅいたよ~」 「ちんぽー!」 ……どうやら俺の頭もとうとうおかしくなったようだ。真昼の夢じゃないよな? 純潔保持記録がまだ30年になってないのに………しかも見えているのは妖精ではなく、ゆっくりである。 ひい、ふう、みい…ってどれだけいるんだよおい…軽く100匹以上はいるじゃねえかよ…。 種類もれいむ、まりさ、みょん、ちぇん、ぱちゅりー、ありす…捕食種以外はいるようだな。 突然の出来事に戸惑っているうちにゆっくりたちの方から俺に話しかけてきた。 「おじさんはだれ?ゆっくりできるひと??」 「ここはれいみゅたちのおうちだよ!ゆっくちできにゃいひとはでていってね!」 「たべものくれたらとくべつにこのとかいはのおうちでゆっくりさせてあげてもいいわよ!」 「むきゅ~ん、ここはくうきがわるいわ……なんだかいかくさい~」 そうだ…この光景はスレによく投下されてるSSで見たじゃないか。 だったら言う事は一つしかない。決まっている。迷う必要はない。左手はそえるだけ…。 「お兄さんはゆっくりできるひとだよ!君たちの仲間に入れて欲しいな!」 精一杯の笑顔で、はっきりとした声で伝える。 「ゆゆっ!じゃあたべものもってきてね!むのうなひとはゆっくりするしかくはないよ!!!」 「まま~れいみゅあまいおかちがたべたいよ~」 「ゆっくりしないでさっさともってきてね!のろまはきらいだよ!あとかわいいまりさにはおおめにちょうだいね!!!」 やった!仲間に入れてもらえた! まさに天にも昇る気持ちだった。 「よ~し、おじさん張り切って用意するからゆっくりまっててね!」 「ゆゆゆっ!おじさんものわかりがいいね!!!」 「ぶをわきまえてるね!にんげんにしてはかしこいね!!!」 もし俺が虐殺スレのお兄さんだったらこのあたりで1匹は死んでいるだろう。だが俺は愛でスレお兄さんだ。このゆっくりたちはツイている。 夢だと思ってたゆっくりたちが今俺の部屋にいる…普通なら疑問に思うところだが俺はこの異変を快く受け入れる事にした。 さてこの子たちにおいしいお菓子をつくってあげなきゃな、バケツプリンとか喜んでくれそうだぞ。 あとはどうしようかな。V●Pに「ゆっくりが俺の部屋に現れたけど質問とかある?」ってスレ立てるのも面白いな。 絶対あいつらバーボンバーボン言い出すぜ。おっと、夜は一緒にお風呂に入って「すっきり~♪」させないとな。 最後は布団で添い寝とかも…?? あああああああああゆっくりがこんなにいっぱいいるなんて嬉しくて頭がフットーしちゃうよおおおおおおおおおおぉぉぉぉ ホァー!ホァー!んんんん゛ほおおおおおおおおおおおおおおおおおお゛おおおおおお゛おおおおおおおお゛おおっっーーーー!!!!!! 今の俺はヘブン状態だ。 きっと世界一の殺し屋がアサルトライフルでバズーカのように狙撃しているという物凄い間違いをスルーできる自信がある。 これからのゆっくりたちとの生活を妄想駄々漏れしながら俺特製バケツプリンの準備を準備しようと台所へ向かう途中足元のあるものに気が付いた。 「何か破れてる…?これは……!!!!」 そこには変わり果て、紙屑になった厳選の東方エロ同人があった。ゆっくりたちが破いたのだろう。 「ああっ!夢●ごこちさんのけーね本が…こっちは榎宮●さんのうどんげ本が……や●っさん、高●さん、倉●さんの本まで……」 怒りたかった。 すごく怒りたかったが本はまた買えばいいがゆっくりは買えない。 物より思い出=プライスレス。 COOLになれ俺。 …よし、落ち着いた。 だがこれは崩壊への序章に過ぎなかった。 掃除を済まし、おかしの下ごしらえを終わらせ一休みしようとリビングに戻ってきた時であった。 部屋の隅にある小さいテーブルのところでゆっくりが集まってなにやら騒いでいる。 その真ん中で声を荒げて時々飛び跳ねるゆっくりが見える。 「おい、喧嘩はやめろ!仲良くしないとおかしを出さないぞ!」 そう、俺は愛でスレお兄さん。 争いごとは大大大嫌い。 急いでゆっくりたちの群れに割ってはいる。だがそこでは喧嘩は行われていなかった。 「ゆゆゆっ!れいむたちけんかなんかしてないよ!!!」 「そーだよ!れいむたちはなかよしだよ!!!」 「…じゃあ何の騒ぎだったんだ?」 俺はゆっくりたちの真ん中にあった騒ぎの原因らしきものを引っ張り出した。 「…Z●Nさんの音楽CDじゃないか、お前らなんでこれを?」 「ゆゆゆっ!そのえすごくへたくそだよ!きみがわるいよ!!!」 「れいむのほうがもっとうまいえをかけるよ!」 「さっさとしまってちょうだい!とかいはのありすはめがつぶれそうだわ!!!」 「むきゅー」 「すごく……へたくそです……」 今なんかガチホモがいたような気がするが無視する。 「あのな~これはお前らの元ネタの生みの親が描いてるんだぞ。Z●Nさんはこのゲームを一人で制作しててだな、それなのにすごくクオリティの高いゲームを作るしそれどころか音楽に関してはそのままCDで出しても……」 自慢のZ●N絵コレクションをゆっくりたちに見せながら俺は説明を続ける。 「ねえ……これもしかしてこれれいむ?」 「これ…まりさ?」 「わからないーわからないよー?」 「ち、ちーんぽ…?」 「…であるからして絵に関しても左右反転してもずれが少ない、以上のことを踏まえて実は絵に関してもレベルが高いと言えるわけだ。どうだ?生みの親のすごさはゆっくり理解できただろ?」 これでこの子たちもZ●Nさんのすごさがわかるだろう。 二次創作とはいえ元はZ●Nさんの作ったキャラだ。わからないはずがない。 だが俺の淡い期待は軽々と打ち砕かれた。 「れいむこのえきらーい!」 「もっとうまいひとがかくべきだぜ!」 「ぜんぜんとかいはじゃないわ!このえのわたしははいなかものだわ!!!」 「この絵がどう擁護しても下手糞なのはゆっくりが見ても確定的に明らか」 …頭が餡子だからだな。仕方がない。 「…もういちどもっとわかりやすく説明してやるぞ、元々絵に関しては本業じゃないのにこの…」 「こんなのれいむじゃないよ!こんなへたなえかくおやはいらないよ!!!」 「ゆゆ!いらにゃーい!」 「かわいいかわいいまりさをぶさいくにかくひとはゆっくりしないでとっととしんでね!!!」 「わかるよー!いらないよー!」 「ちーんぽ!!!ちーんぽ!!!」 ゆっくりたちからの心無い下手糞コール。 どうしてこんなに非難できるのか。 ゆっくりたちの憧れの人への罵倒に過去の忌まわしい記憶がよみがえる。 まだ俺に創作意欲があった時の記憶。まだ俺が創作活動をしていた時の記憶。 「これなら俺が描いたほうが上手いなwwwww」 「こんな絵で売れると思ってんの?ばかなのしぬの?」 「売り場スペースの無駄遣いだなwwww」 「萌えない絵に価値はないでござる」 人の苦労がわからないのか?批評するのは簡単だけど作るのは難しいんだぞ?俺だって何もしなかったわけじゃない。Z●Nさんに憧れて絵も音楽、そしてプログラムも勉強した。 でもどれも駄目だった。駆けっこで速く走るのは才能だ。じゃあなんで絵や音楽がそうじゃないと言い切れる?どうして絵や音楽は練習すれば上手くなるという希望を持つ? どうして自分だけは他人と違うと思う?それだって才能だろう?…俺には才能なんてなかった。 夢に挑戦した結果がこれだよ。 だからこそ尊敬する…頑張る人を馬鹿にすることだけは許せなかった。 「こんなきもいものはみんなでゆっくりしょぶんしようね!!!」 「とかいはのせいかつにこんなものはふようだわ!」 「ゆゆゆ!みんなでおとすよー!!!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 「ゆっこらせ!!ゆっこらせ!!」 ―ガシャャャァアン― CDが崩れる音で現実に還った 自分の考えが頭の中を駆け巡って目の前の出来事が映らなかった。 ゆっくりたちが押し倒したであろうCDは床に落ち、一部は割れてしまったようだ。 音楽の断末魔は俺の心の中で何かが壊れる音に似ていた。 「…………処刑の時間だ」 数分前の自分からは出てこないような台詞が出てきた。 自分でも驚きだ。 「おじさん!このきもいものさっさとしまつしてね!!それからさっさとおかしちょうだいね!!」 「れいみゅおなかしゅいた~もうまてない~!!!」 「ごめんね~あかちゃんたち。おじさんがぐずなのがいけないんだよ!!!さっさとれいむのあかちゃんをゆっくりさせてあげてね!!!」 「いいとししてどうていのおじさんはおやつよういしたらなわでくびくくってゆっくりしんでね!!!」 「ハァハァまりさ~おじさんいなくなったらいっしょにすっきり~♪しようね~ハァハァ」 俺は近くにいた赤ちゃんゆっくりをみんなに見えるように高だかと摘み上げた。 「ゆゆ~おそらをとんでるみた~い♪」 これからどうなるかも知らないで暢気なもんだ。 「ゆゆ!あかちゃんずるいよ!!れいむもやってね!!!」 「ちがうよ!かわいいまりさがさきだよ!!!」 「すごくゆっくちしてていいな~」 さて、注目を集めたところでそろそろやりますか。俺は息を吸い込み、 「俺のこの手が光って唸る!」 「ゆゆっ?」 突然の大声にゆっくりたちが目を丸くする。 だがこれから何が起こるのか期待しているように俺の手を見ている。 「お前を倒せと輝き叫ぶ!!」 「ゆゆゆっ!?」 まだこの非常事態がわからないらしい。 手に乗った赤ちゃんゆっくりを羨ましそうな目で見ているゆっくりばかりだ。 ゆっくりタイムもこれまでだ。 「ひぃぃぃっっさぁぁぁつ!!!!シャャイニィィィィィィングフィンガァァァァァァァ!!!!!!!」 「ゆぐっぶぶぶぶっっっ!!!!」 赤ちゃんれいむは満足なやられ台詞も言えないまま餡子の雨を降らせる雲と化した。 「れ、れ゛い゛む゛のあ゛がぢゃん゛がああああああああああああああ!!!」 「おじさん!れいむにあやまってね!!すぐにあやまってね!!!」 「そうだよおじさん!ゆっくりばいしょうとしゃざいしてね!!!」 所詮二次創作は二次創作。Z●Nさんの偉大さがわからない屑だった。 今まで二次創作だからってこいつらは好き勝手に暴れてたんだ。 だったら俺も爆竜戦隊並みにあばれあばれあばれまくらせてもらおうじゃないの。 この作品も二次創作(笑)だしな。 とりあえず謝れとうるさいゆっくりたちに対して日本式に謝ってやることにした。 「ごめんなさいっっ!俺が悪かったですっ!!!」 俺は勢い良く膝と手をつき頭を地面に伏せた。 土下座だ。 当然足元にいたゆっくりたちは潰された。 「ま゛だれ゛い゛む゛のあ゛か゛ち゛ゃんがあああああああああああああああ!!」 「ま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああ!!!」 「ぢ、ぢんぼおおおおおおおお!!!」 「どうした?ほーら、お兄さんは謝罪してるぞ~?」 「おじさん!れいむのあかちゃんがつぶされてるよ!!!」 「ま゛りさ゛あああああ!!へんじじでよま゛りさ゛あああああああああ!!!」 「もうあやまるのはいいからゆっくりしないでそこどいてね!!!」 「へー、お兄さんの土下座を受け入れてもらえないのか~……じゃあこれでどうだっ!」 土下座の状態からそのまま足を伸ばし、両手を前に突き出す。 土下寝だ。 ぶちゅとゆっくりの潰れる不快な音がたくさん聞こえた。 シャツも餡子で汚れてるだろうがどうせこのあと返り血ならぬ返り餡子を浴びまくる予定だからどうでもいい。 ちなみに寝心地はなかなかいい。 饅頭のベットなんて普通は一生に一回も味わえないだろうしな。 「い゛や゛あ゛あ゛あああああああああああああああ!!!!」 「はやくどいてええええええ!!!れいむのいもうとがああああああああ!!!」 「はやくどいてねっ!!!!はやくどいてねっ!!!!」 もうゆっくりすることなど完全に忘れてやがる。 だんだん面白くなってきた。 「なあ許してくれる?許してくれるなら土下寝やめるけど?」 身体をわざとくねらせながら尋ねた。 新たな犠牲者が俺の下で量産されている。 「ゆ゛るずがらあ゛あ゛ああああああああああ!!!ゆ゛るずがらぞごどいでえええええええええええええ!!!!」 「ゆ゛っぐぢやめでええええええええええええええええ!!!」 「はやぐじでええええええええええ!!!れ゛いむ゛のあがぢゃんがじんじゃうううううううううううう!!!」 「ありがとう!おじさんうれしいよ!これからも仲良くしようね!!」 その場をゆっくりと立ち上がり満面の笑みで答えた。 だがそんな俺を無視しゆっくりは下敷きになっていたゆっくりに駆け寄っていた。 「あ゛がぢゃぁぁぁぁんじっがりじでえ゛え゛ええええええええ!!!」 「ゅ…ゆっぐぢ、ぢたかったよぉ…」 「きずはあさいよ!なめてあげるからすぐなおるよ!!」 「い゛だいよ゛おおおお!!あ゛んごがどまらないよおおお!!!」 「まりざあああああああああ!!!めをあげでよおおおおおお!!!い゛っじょにずっぎりするんでしょおおおおおお!!!!」 「ど…どぼじで…ごんなごどに…ぐぶっ…」 おお死屍累々死屍累々。 地獄ってこんな光景かねえ。 「天罰とやらを私が体現すればこうなりますよっと」 思わずそんな台詞も出てしまう。 「ほーら、そんな潰れた子なんてどうでもいいからお兄さんとゆっくりしよーね☆」 キラッ☆とした笑顔でゆっくりに詰め寄る。対するゆっくりたちは田mゲフンゲフン…般若の表情だ。 「うるさいよ!!おじさんのせいであかちゃんがしんだよ!!そんなひととはゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりをころすおじさんなんかとっととしね!!!」 「かえしてね!!!ありすのこいびとのまりさをかえしてね!!!!」 おーおー怒ってる怒ってる。 全然怖くねえ。 「うっせーな、お前らが謝れって言ったから謝ったんだろ?悪いのはお前らじゃん!」 「しらないよ!!!おじさんはゆっくりしないでしね!!!!いますぐしね!!!!」 「あやまってもゆるさないよ!!!おじさんはしね!しね!しね!」 ゆっくりたちが俺に体当たりを始めた。 ぶつかるたびにぱふっと気の抜けるような音がする。 本当に痛くないな。幼稚園児…いや、赤ちゃんすら泣かせられないだろうなこれは。 人間と饅頭との歴然とした力の差を理解できない可哀相な餡子脳がとても哀れに思えたのでわざとやられてみることにした。 「あーれーやーらーれーたー」 どっかの先生みたいなやる気のない台詞とともに俺は床に倒れた。 その時もちろん何匹か潰すのを忘れない。 「ゆゆっ!れいむたちかったよ!!」 「ばかなおじさんだったね!まりさたちにはむかったけっかがこれだよ!!!」 「まりさのかたきとったよ!しんだこもゆっくりやすらかにできるね!!!」 あんな大根演技に本当に騙されてやがる。 それと今倒れて下敷きになったやつのことはどうでもいいのかお前ら。 流石餡子脳。2つの事が考えられないのな。 笑うのを堪えながら死んだふりをしていたら騒ぎの最中避難したゆっくりたちも俺の周りに集まってきた。 「ゆっくちじごくにおちてね!」 ぽこっ ぽこっ 「こいちゅがれいみゅのいもーとをおおお!!よきゅもおおおおお!!」 ぱふっ ぱふっ 「むきゅー!!」 ぽむっ ぽむっ 赤ちゃんや貧弱なぱちゅりー種が俺を取り囲み死体(本当は死んでないけど)に鞭を打ち始めた。 どこまでも最低な饅頭だ。 薄目で見える偉そうに踏ん反り返ってるゆっくりの表情に殺意が沸く。 死んだ振りも飽きた。 俺は手足を激しくバタつかせ起き上がる。 「ゆっ!ぷぎゅっぶちゃ!」 「むきゅんぶぶっ!」 「おおもいぃぃぶべらっ!!」 「ま、まりさだけはたしゅけぶぶぶほおおお!!!」 近くにいたゆっくりどもは俺の餌食だ。 死んだ振りのゲリョスに近づいた結果がクエスト失敗だよ。 こいつらの場合人生…じゃなくて饅頭生の終了だけどな。 勝利の余韻に浸っていたゆっくりたちがやっと俺の復活に気付く。 「ゆゆっ!なにがおこったの!?」 「どおじでえ゛え゛えええええ!!どおじでおじさんいぎでるのおおおおおおおおおおお!!!???」 「あ゛あ゛あ゛ああああああまたれ゛いむのあがぢゃん゛がああああああああああ!!!」 「ま゛りざのがわい゛いあがぢゃんもおおおおおおおお!!!!!」 「ぱちゅりーがああああああああああ!!ぱちゅりーがああああああああああああ!!!」 赤ちゃん死にすぎだろ常考。 守る気がないと言わざるを得ない。 死体に鞭打った結果がこれだよ。 「身を守るために仮死状態になる昆虫がいるが…やれやれ死んだ振りってのも楽じゃないな」 こういう時に使う台詞を覚えている俺も俺だな。 「ゆゆゆ!!だまされたよ!!にんげんのくせになまいきだよ!!!」 「でもこんどこそしね!ゆっくりせずにしね!!!」 「あのよでわびつづけてねおるすてっど!!!」 俺はオルステッドじゃねえよ。 それよりまだ勝つ気でいるらしい。 そろそろ虐殺に入るとしますか。 俺は何もないベルトの上を人差し指で3回押し、構えた。 「ライダー……キック!!」 「ゆぐっ!!!!」 宣言とともに目の前にいたゆっくりを思い切り蹴り飛ばす。 小気味のいい破裂音とともにゆっくりは向こうの壁に美しい餡子色の花を描いた。 突然始まった俺の快進撃にゆっくりたちの動きが止まった。 「てーゐ☆」 「ぶぼっ!!!!」 今度は気の抜ける台詞とともに蹴る。 しかし強く蹴りすぎたのか蹴りが当たった瞬間破裂した。 力加減が難しいな。 ゆっくりは状況を理解してないのかそれとも恐怖心からか知らないが動きが止まったままだ。 せっかくだから歌いながら蹴り飛ばすか 脳内では『FULL FORCE』がかかっていた。 …… 「不可能なんてないはず~総てを手に入れるさ~♪」 「ぐぼぉっ!!!」 最後はゆっくりを空中に抛り上げてカウンターキックで決める。 火花ではなく餡子を飛び散らせゆっくりが破裂する。 最高にハイってやつだ。 かける曲は『覚醒』でも『辛味噌』でも良かったなとどうでもいいことを思う。 とりあえず俺を殺そうとしたお馬鹿なゆっくりは全部蹴り殺した。 さて、残りのゆっくりはどう甚振ってやろうか… そんなことを考えてると変わり身の早さに定評がある一匹のまりさが早速仲間を裏切っていた。 それをきっかけにみんな責任を押し付けながら我先にと逃げ出した。 「まりさはわるくないんだぜ!わるいのはぜんぶれいむなんだぜ!!れいむをすきにしていいからまりさはにげるぜ!!!」 「ゆゆ!れいむはわるくないよ!!まりさだけにげるのはずるいよ!!!」 「むきゅ~んまって~」 だがここは俺の家。しかも俺は帰ってきてから玄関には鍵をかけ窓は閉めたままだ。 人間の生活スペースでゆっくりの隠れることのできる場所など高が知れている。 かくれんぼの開始だ…結果は決まってるがな。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1311.html
ゆっくりいじめ系110 髪飾りの続きです。 前の騒動の際に拾ったゆっくり霊夢。 こいつは仲間の死を見たせいか、仲間を殺してしまったせいか、ずっと固まったまま動かない。 口に物を入れれば食うし、生きてもいるようだが心が死んでしまっている。 俺自身も痛みを与えたり、髪飾りを死んだゆっくりの物交換してみたりと色々な方法を試みたが、何一つ反応を見せない。 「こうなったら代案ならぬ代餡として、中身でも入れ替えてみるか……? でもなぁ……」 それではつまらない。このゆっくり霊夢だからこそ期待できるものがあるのだ。 悩んでいても大して良い案は浮かばずに数日が過ぎた。 今日も今日とて歩きながら考えていると、道脇の草むらで何かが動いた。 「ゆぅ……くりぃ……」 ゆっくり魔理沙だった。どうやら傷ついて餡子が減っているらしく、かなり皮のたるみが目立つ。 別にどうでもいいか、と無視しようとした時、ふと妙案が思い浮かび、足をゆっくり魔理沙の前で止める。 「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」 「ゆっ……りぃ……」 うーむ、我ながらうそ臭い演技だ。しかし、ゆっくり魔理沙の方は本当に重体らしく、返事をする元気すらない。 おそらく何らかの理由餡子を吐き出してしまったため、生きていくぶんの餡子が足りていないのだろう。 「よいしょっ、と……!」 ゆっくり魔理沙を抱え上げて、家に走り帰る。早くしなければ死んでしまうかもしれないのだ。 「待ってろ……! すぐに助けてやるからな!」 家に帰り、ゆっくり霊夢用の餡子とオレンジジュースを与えると、ようやく危機は脱したように見えた。 さっきよりも少しふくらみ、顔ツヤも良くなっている気がする。 「ありがとぅ……おにいさん……」 「無理に喋るな。とりあえず、ここでゆっくりしていけよ」 「うん、ゆっくりしていくね……」 ゆっくりぱちゅりーぐらいのか細さである。これは休ませておいた方がいい、と判断し、その日は俺も就寝した。 寝る前にゆっくり魔理沙をあえて、ゆっくり霊夢の近くに置いておいた。 次の日、ゆっくり魔理沙の様子を確認すると、本調子ではなさそうだったが、昨日よりかは随分良くなっていた。 「どうだ? 身体はもう大丈夫か?」 「ゆっくりやすめたから、すこしだいじょうぶになったよ」 やはり、答える声にはゆっくり種特有の無駄な元気さはない。もう少し置いてやるべきかな。 「ゆっ、おにいさん、あのこどうしたの?」 「ん、ああ、ゆっくり霊夢か……」 ゆっくり魔理沙は置物のように鎮座したゆっくり霊夢を気にしていた。ゆっくり同士の連帯感故だろうか。 思惑通りに事が進んでいる。俺はいくらか考えたふりをして話してやった。 「あのゆっくり霊夢は家族がみんな死んでしまって、酷い目にあったんだ。それで動かなくなっちゃったんだ……」 簡潔すぎるほど簡潔だが、ゆっくりに小難しい話をしても分からないだろう、と判断して適当にまとめた。 「……ゆっ!」 傷が癒えきっていない身体で飛び跳ね、ゆっくり霊夢の隣に行くゆっくり魔理沙。そして、いつもの言葉。 「ゆっくりしていってね!」 「………………」 相変わらず、反応しないゆっくり霊夢。……よし、実験開始。 「なあ、ちょっといいか?」 「ゆ?」 「このゆっくり霊夢を見ててやってくれないか? 食べ物はちゃんと渡すし、見てるだけでもいいんだが」 「いいよ! ゆっくりみてる!」 心なしか元気が戻ってきているように見える。やけに聞き分けがいいところにが何かありそうだ、と感じさせる。 『ゆっくり同士の交流で心は戻るか』という目論見であるが、どちらに転んでもどうでもよかった。 その日から、俺は朝食と昼食二匹分の食べ物を渡し、仕事をして、夜にまた食べ物を渡しながら一日の経過を聞くという生活になった。 ゆっくり霊夢は自分から食べようとはしないため、誰かが与えてやらなければならなかったが、それはゆっくり魔理沙がやってくれた。 ゆっくり魔理沙もゆっくり霊夢のことが気になるらしく、傍から見ていても姉のように甲斐甲斐しく世話をしている。 それが理由なのか、近頃ではゆっくり霊夢が微妙に反応を示し始めている。 小さくだが「ゅ……ゅ……」という声が聞こえるのだ。それを聞いて、ゆっくり魔理沙は嬉しそうに語りかけたりしている。 ゆっくり魔理沙は出来ないことも弁えているらしく、「れいむをあらって、すっきりさせてあげて」などと頼まれた。 ゆっくり霊夢は動かないので、ゴミや埃が積もって汚れてしまうのだ。 ついでにゆっくり魔理沙も洗ってやろうとすると、「まりさはいいよ」と拒否したので無理やり洗ってやった。 くすぐったそうにしながらも、暴れずに大人しくしているゆっくり魔理沙。 ゆっくり種としてはその聞き分けの良さ、おとなしさは奇妙というか異常であった。 俺は今までの経緯や行動から、ゆっくり魔理沙の事情をだいたい予測していた。確証を得るために語りかける。 「なあ、魔理沙。お前、仲間からいじめられたりしてたんだろ。だから、あんなに傷ついてたんじゃないか?」 「…………」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢が乗り移ったかのように黙り込む。やがて、ゆっくりと口を開いた。 「まりさはね、ぼうし、なくしちゃったんだ……」 「そうか……」 それだけ聞けば何があったのかは予想できる。そして、現在のゆっくり魔理沙は帽子をつけている。 「他のゆっくりから取ったのか?」 ゆっくり魔理沙は一瞬迷ってから、言った。 「しらないゆっくりの、しんじゃったゆっくりのぼうし、ひろったんだ」 「知らなくて、しかも死んでるなら別にいいんじゃないか? 誰も使わないわけだし」 俺はてっきり、生きているゆっくりから帽子を奪ったから、いじめやリンチにあったんだと思っていたのだが。 むしろ、帽子やらリボンやらがないと、元いた群れであっても仲間扱いされなくなるのは前回の実験で判明したことだ。 「しんじゃったゆっくりのぼうしだとね、みんなからきらわれちゃうんだ……」 嫌われる……? どういうことだ。帽子をかぶってるのにいじめられただと? まさか、ゆっくりは分かるのか。そいつに合っていない髪飾りや、死んだゆっくりの髪飾りを使っているのが。 これは、非常に興味深い。俺はゆっくり魔理沙から当時の状況を詳しく聞くことにした。 ゆっくり魔理沙の言ったことをまとめてみると、 1、「帽子を失くす」といじめられた。群れから無視される立場となる。 2、「生きている他のゆっくりの帽子」を奪ったら、仲間として認められた。しかし、帽子を奪い返されると、以前の立場に逆戻り。 3、「死んでいるゆっくりの帽子」をかぶったら、群れの仲間どころか、行く先々のゆっくりに攻撃された。で、倒れて拾われる。 という経過らしい。 ……成る程。ゆっくり種の髪飾りにはここまで意味があるとは。驚愕の思いを隠しきれない。 そして、ゆっくり魔理沙がゆっくり霊夢を世話するのも、群れから追い出されて寂しかったからだろう。 しかし、もしもゆっくり霊夢が目を覚ましたら、どんな行動を取るのだろう。 それはそれで楽しみである。 「ゆっくりしていってね!」「ゆぅ!」 ある朝、二匹分の声で目が覚めた。まさか、と思い居間へ確認しに行くと、そこにはゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が仲良く並んでいた。 「おにいさん、ゆっくりおはよう!」「ゆっ!」 「……帽子、気がついてないのか?」 ゆっくり魔理沙の言うことが真実なら、ゆっくりには死んだゆっくりの帽子を判別する能力があるみたいなんだが。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりしてるよ!」「ゆゅ!」 と、そこで気づく、家にいたゆっくり霊夢は大きさであれば、それなりに成長してる個体のはず。 しかし、先ほどからまるでほとんど喋ってしない。精々、「ゆ」の一文字文ぐらいだ。 思い浮かんだのは幼児退行という言葉。しかし、そんなのゆっくりにも起きるのか? 疑問を持ちながらも、さらなる観察を続けることにした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっ!」 最初に気づいたのは、このゆっくり霊夢は「ゆっくりしていってね!」と一切言わないことだった。 ゆっくり子霊夢ですら「ゆっくりちていってね!」と返事するのに、何度も呼びかけても何も返さない。キョトン、としたままだった。 ゆっくり種としての常識でもぶっ壊れてしまったのだろうか。 個の識別は出来ているようである。ゆっくり魔理沙は当然としても、俺ですら家族の一人のように反応する。 しかも、言葉の識別も出来ているらしく、「お~い」と呼ぶと普通に寄って来て、「ご飯だ」と言うとやたらと速く寄って来る。 何故だか身体能力もあがっているらしく、己の背丈を越えるほどの跳躍力を見せることもあった。 それに引っ張られるように、ゆっくり魔理沙の能力も上がってきている。単純に傷が癒えた、というだけでは説明がつかない。 傷の治りが妙に早かったり、語彙が増えたり、知能が上がっているような気配すらある。 ゆっくりとしての禁忌を破ったからなのだろうか。よく分からない。 こうなってくると、最早ゆっくりとは違う種とすべきか! と一人盛り上がってみたが、即断するにはまだ早い。 近頃では二匹が仕事を手伝ってくれるようになった。仕事といっても農作業だが。 「おんがえしだよっ!」「ゆ~!」 と言っては泥だらけになるのも構わず、文句も言わずにせっせと働いている。いや、楽だね。 今日もまたゆっくりたちが俺の手伝いをしていると、草むらから音がした。ぴょん、と飛び出る塊。 「ゆっくりしていってね!」 野生のゆっくり魔理沙であった。それだけなら別にどうということはないのだが、今はまずい。 「ゆ……!? ゆっくりしねぇ!」 「ゆぐぅ!?」 野生ゆっくりが、俺のところのゆっくり魔理沙を見た途端、人格が変わったように体当たりをしてくる。 相手が大きかったこともあり、吹っ飛ばされるゆっくり魔理沙。野生ゆっくりは攻撃の手を緩めない。 「ゆっくり! しね! しねっ! しねぇぇっ!!」 「ゆぶっ! ぎゅぶ!」 鬼のような形相で攻撃し続ける野生ゆっくりと、口から餡子が出始めているゆっくり魔理沙。 放置するのも面白いのだが、まだやってもらわねばならないことがあるので助けようとする。 と、そこへ駆けつけるゆっくり霊夢。ゆっくりとは思えない速度で野生ゆっくりにぶつかる。 「ゆーーーー!!!」 「ぐべぇ!?」 二倍近く体格差があったように見えるのだが、それを物ともせず、今度は野生ゆっくりが弾き飛ばされる。 どれほどの力が込められていたのか、野生ゆっくりは木にぶつかると、餡子を撒き散らして潰れた。 普通のゆっくりとは比べ物にならない力の強さである。普通のゆっくりだと、集団で攻撃してようやく一匹を潰せる程度の力だ。 ゆっくり霊夢は野生ゆっくりのことなど眼中になく、すぐさまゆっくり魔理沙のところに駆けつけた。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 ゆっくり霊夢が悲痛な叫び声を上げる。何事か、と見てみれば、ゆっくり魔理沙の皮が破れて餡子が飛び出していた。 どうやら、吹っ飛ばされた時に木の枝にひっかけてしまったらしい。 「ちっ……まずいな。大丈夫か?」 「ゆぅぅ……」 だらり、と返事も出来ずにへたりこんでいるゆっくり魔理沙。そこまで、餡子の流出が大きいのかとも思ったが、何か違う。 身体がぶるぶると震るわせ、悪夢にうなされているように「ゆっ、ゆっ、ゆっ」と呻いている。 とりあえず、症状を観察するのは後回しにしてゆっくり魔理沙を家の中に運び込むことにした。 一応の手当ては終了した。傷口にテープを貼り、オレンジシュースを飲ませておく程度のものであったが、応急処置にはなる。 状態が良くなったわけではないが、傷よりも精神的に弱っているようだった。 「みつかった……みつかっちゃたよぅ……」 涙を流すわけでもなく、生気の抜け落ちた顔でぶつぶつと呟き続けている。 ゆっくり種の禁忌を犯しているゆっくり魔理沙は、制裁を恐れているのだろう。 「大丈夫だって。襲ってきたやつは潰しただろ? もう来ないんじゃないか?」 「そうかな……?」 怯え切った顔つきだ。俺としてもゆっくり種にそこまでの探知能力はないと思う。第一発見者がいなければ犯罪は露呈しない。 「もう、ゆっくりできないできないよぅ……」 なおも呟き続けるゆっくり魔理沙。どうしたものかな、と思った時、 「ゆぅ、ゆっ、ゆ、ゆっくり、しない、でね!」 なんとゆっくり霊夢が喋り始めた。ぴょんぴょん、と跳ねながら、頑張って話そうとしている。 「ゆっくり、しなくても、だいじょうぶ、だよ? おかー、さんは、れいむが、まもるよ!」 たどたどしく、けれど、はっきりと宣言した。 母親と認識していたことにも驚きだが、「ゆっくりしなくていい」とはゆっくり種としての存在意義に関わるのではないだろうか。 「さっきのは、ちがう、ひと。れーむたち、とは、なんかちがうの」 どうやらゆっくり霊夢は明確な境目を他のゆっくりに感じているらしい。 これは……面白い。その背中を押してみるべきだろう。 「そうだ、違うぞ。。あいつらはお前たちみたいなのが嫌いなんだよ」 「? どーして?」 「お前たちの髪飾り、リボンや帽子は死んだゆっくりのものでな。普通のゆっくりはそういうのを許さないらしい」 「だから、おかーさんを、いじめたの?」 「そうだ」 簡潔に伝えてみると、ゆっくり霊夢は身体をぶるぶると震わせ始めた。 怒りの感情かもしれないが、そこには何かしらの決意みたいなものが感じられた。 「じゃ、れーむは、ゆっくりじゃなくていい! そんなこというひと、みんなおいはらうよ!」 「へぇ……」 そっちの方向へ行くのか、と俺は感心していた。種であることよりも親を守る。 もしかすると、自分が既にゆっくり種から受け入れられないと分かっているのかもしれない。 「お前はもうゆっくりしないのか?」 「しないよっ!」 「じゃあ、お前は今度から『ゆっくりまんじゅう』っていう名前にしてみたらどうだ? ゆっくりとは違うってことで」 「ゆっ!? ゆっくりまんじゅう! れーむはゆっくりまんじゅうだよ!」 思いのほかあっさり承諾した。むしろ、喜んでいる。俺としては、人づてに聞いた小噺から思いついたものなんだが。 これで、本当にゆっくりとは違うものになったんだろうか、明日はどうしてみようか。 そんなことをワクワク考えながら、俺たちは眠りについた。 夜中。声と気配で目を覚ます。ゆっくりまんじゅうたちのいる部屋からしているようだ。 「なんだ……まさか!?」 急いで、居間に繋がっている扉を開けようとする。が、何かにつっかえているらしく、僅かの隙間しかできない。 その隙間から声が聞こえてきた。 「おかーさん! おかーさん! やめぐっ!?」 「ゆ、ゆゆ……」 「ゆっくりしないでね!」「ゆっくりできないよ!」「すっきりさせてね!」 まんじゅうゆっくりたちとは別の無数の声。俺は事態を察して、扉からではなく、窓から外に出て、玄関へと向かった。 「うわっ……」 表から見ると、玄関は開け放たれており、何匹ものゆっくりが部屋に入ろうとしていた。 しかし、既に入っているやつが多すぎて入れていない。それでも、まだ部屋の中に入ろうとしている。 「邪魔だ! どけっ!」 玄関周辺のゆっくりを潰して道を作る。ようやく、部屋の中を見るとそこには床一面にゆっくりが蔓延っていた。 「ゆっくり!」「ゆっくりできないやつはしね!」「じゃまなひとはどっかいってね!」 どうやら、俺には全く感心を抱いていないようだ。ゆっくりまんじゅうたちを目で探してみると、 「ゆぅ! ゆっ!? ゆぅぅぅぅぅ!!」 多くのゆっくりに圧し掛かられているまんじゅう霊夢がいた。 力で押し返そうとしているが多勢に無勢。潰されてはいないが、完全に身動きを封じられていた 「おかーさん! おかぁ、さん!」 その声で今度はまんじゅう魔理沙を探すと、テーブルの上で何匹かゆっくりがまとまっていた。 まさか、とテーブルに手を伸ばすが、玄関からでは遠く、突っ込むにはゆっくり達で動けない。 「ゆ、ゆ……ゆ。ごめんね、ごめんね……」 テーブルでは魔理沙が頭から食べられていた。何度も謝罪の言葉を呟きながら。誰に向かって謝っているのだろう。 「ゆっ、ゆっ! あのひとたち、へんなゆっきゅだよ! しんじゃえばいいのに!」 「みたよ、おひるにここのおうちでゆっくりしてたよ! ゆっくりじゃないのになまいきだよ!」 他のゆっくりよりも嬉々として、ゆっくりまんじゅうたちに攻撃を加えている二匹のゆっくり魔理沙。 あれは、もしかして昼間の野生ゆっくりの家族だろうか。現場を見られていて、仲間に場所を伝えたというわけか。 第一発見者がいなくても、第二発見者がいれば犯罪は露呈するか。くそ、あの後、周辺を警戒しとくんだったな。 「れーむもおかーさんも、だれにもめーわくかけてない! やめて、やぶぎゅ!?」」 動き回ってゆっくりたちを引き剥がそうとするが、さらに多くのゆっくりに圧し掛かられて、餡子が出そうになる。 「ゆっ、くりぃぃぃぃ!!」 その光景を見た魔理沙は最後の力を振り絞って、もう半分以上、無くなっている身体で飛んだ。我が子を守るため。 霊夢の近くに落ちる魔理沙。その衝撃と気迫に驚いて、群がっていたゆっくりたちはわらわらと散っていく。 「おかー、さん? おかーさん!? おがーざぁん!?」 「ごめんね……ごめんね……」 「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 最後まで謝りながら息絶えていく魔理沙。泣きすがる霊夢。 「ようやくしんだの? ばかなの?」「あとひとつ、つぶせばゆっくりできるね!」「すっきりしようね!」 口々に汚く罵るゆっくりたち。流石に見ていて腹が立った。俺がやってみたかったのに。 先ほどの、場所を教えたゆっくり魔理沙がまんじゅうへと寄ってくる。 「ゆっくりたべるよ! どいてね!」 餡子を食う気だろう。完全に余裕の笑みを浮かべている。 「おいしそう~♪ あ~ぐぎゃ!?」 ゆっくり魔理沙は食べようとして突如、吹き飛ばされた。壁にぶち当たって、中身が飛び散る 「ゆっくり!? ど、どうしたのぉ!?」「ゆっくりしんじゃったよ!」 「ゆっくり……」 ゆっくりたちが声した方を見る。ゆっくりたちの認識において、そこには潰され、食べられる予定の獲物しかいないはずだった。 「ゆ、ゆ!?」「ゆゆゆ!?」「ゆぅ!?」 「ゆっくり、するなぁぁぁぁっ!!!」 そこにいたのは狩人だった。否、狩人という言葉すら生ぬるい。それは戦士だった。 周囲のゆっくりを比較にならない力と素早さによる体当たりで叩き潰すまんじゅう。その凄まじい勢いにゆっくりたちは恐慌を来たす。 「い゛や゛ぁ゛ぁぁ!?」「おうぢがえる! おうぢにがえりだいよぉ!」「だじでぇぇっ!!!」 先を争って俺の方、すなわち玄関へとへ向かおうとするが、数が多いのが災いして思うように動けない。 その様子を見てから、俺はまんじゅうに声をかけた。 「おい、まんじゅう。一人で出来るか?」 「ひとりで……ひとりでできる! まかせて! みんな、ゆっくりできなくさせるよ!」 「だ、そうだ。お前ら、全員そこの『まんじゅう』にやられちまえよ」 指でまんじゅうを指し示してやってから、ゆっくりと玄関の扉を閉める。外にいたゆっくりもついでに放り込んでおく。 俺自身もイラついていたのだ。気分的には収穫しようとした果実を目の前で掻っ攫われた気分に似ている。 中の様子を窓から見てみる。 多数のゆっくりが外に出ようと扉に張り付いているが、結局開かず、後ろから来た他のゆっくりに潰されている。 「だぢでぇぇ!! ごごがらだじでぇ!」「 ゆ゛っぐり、じだいよおおおお!」「まんじゅういやぁぁ!!」 皆が逃げようとすればするほど、潰されていくゆっくりたち。しかし、後ろから今だ危機が迫っているのだ。 「ゆっ、くりぃ!」 まんじゅうは上空から勢いをつけて、一匹のゆっくりを叩き潰す。広がる餡子。見せつけるようにまんじゅうはそれを食べた。 「むしゃり! むしゃり! ぺっ!」 リボンを吐き出す。さらに震え上がるゆっくりたち。 髪飾りを盗った許せないゆっくりがいると知って群れで潰しに来たはずなのに。しかし、現実は過酷だった。 「どうじでぇ!? どうじでこうなるのぉ!?」「ゆっぐりざぜでね!?」「「まんじゅうはこないでぇぇぇぇ!」 「どうして? ゆっくりたちがれーむの、ゆっくりまんじゅうのおかーさんをころしたからだ!!」 今更、たわ言を抜かしていたゆっくり魔理沙を潰す。それは母に似ていても、決定的に母ではなかった。 「まんじゅう!?」「まんじゅうごわ゛い゛!」「ま゛んじゅう゛、やべでぇ!」 「ぼうしやリボンをなくしたゆっくりは、まんじゅうになってイジメられるんだ! おぼえとけ!」 「お゛ぼえ゛る゛! お゛ぼえ゛る゛がら゛だずげでぇぇ!」「ゆっぐいじだがっだよ゛う゛!」 「じにたくないよ゛おお゛お゛お゛お゛お゛!」「ぎゅっぐりぃ!!」「おがあざぁん!」 まんじゅうは飛び上がって、扉に群がっているゆっくりに思い切り体当たりをぶちかます。その勢いで扉が開け放たれた。 既に大半のゆっくりはやられていたが、それでも残ったゆっくりが我先にと逃げ出していく。当然、仲間に潰されたゆっくりもいた。 「まんじゅう゛ごわい! ま゛ん゛じゅうごわいよぉ!」「ま゛んじゅうなりだぐな゛いぃぃぃ!!」 「ずっぎりじだがっだだげなのにー!!」「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!???」 それぞれがまんじゅうに対して恐怖を口にしながら、どこかへ行った。 「いいのか、そこそこの数を逃がしたけど」 まんじゅうの狙いは分かっていたが、あえて聞いてみる。 「いいよ。あれで、まんじゅうがこわいっておもってくれれば、いいんだよ」 やはり計算してやっていたか、と少し感心していると、まんじゅうが俺の方を向いて小さくお辞儀をした。 「なんだ、どうした?」 「おとーさん、いままでそだててくれて、ありがとう。ここにいると、ゆっくりがいっぱいきて、めーわくがかかるからどこかにいくね」 「何……?」 俺ってお父さん扱いだったのか、と思いながら、なんとなくある推論が思い浮かんだ。 このゆっくり霊夢、もといゆっくりまんじゅう霊夢は、本当にゆっくり種とは違うものに変質しまったのではないだろうか。 きっかけは先日の惨劇であり、髪飾りを変えたことかもしれない。 しかし、俺や元ゆっくり魔理沙と暮らすことでゆっくりとしての常識を失っていったのかもしれない。 あの身体能力はそんな中でも生き残るために発揮されている、所謂「火事場の馬鹿力」だろうか。 そうだとすると、その寿命は長くは保てないだろう。 これはこれで興味深い事例であった。 俺はまんじゅうに、餞別として潰れたばかりの餡子を包んでくれてやった。 面白いものを見せてくれた礼でもある。 「元気で、とは言えないが、まあなるべく死ぬなよ?」 「うん。おとーさん、おかーさんのぶんまでしなないよ。ばいばい」 どこか穏やかな顔つきでまんじゅうは、消えていった。 その後、やけに強いゆっくりとして、まんじゅうの存在はたまに人々の噂にされることもあったが、死んだかどうかは分からない。 普通に考えて、いくらまんじゅうでも敵の数が多いと生き残れないのではないか、と思う。 それでも、時折だが山からある叫び声が聞こえるそうだ。そう、 「ま゛ん゛じゅ゛う゛ごわ゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ!!??」 と。 ここらで一つ、後書きっぽいものをどうぞ。 ゆっくりに「まんじゅうこわい」と言わせたかった結果がこの長文だよ! 「髪飾りの失くしたゆっくり」だと長いので適当に名前をつけてみたら、「まんじゅう」になった。反省している。 「ゆっくりまんじゅう」を正式名称にしたのは、流石に「ゆっくり」って言葉がついていないとマズイだろ、という判断から。 地の文で書く時、または他のゆっくりが呼ぶ時には「まんじゅう」になります。「饅頭」に非ず。 「まんじゅう」の脳内設定も一応書いておきます。使っても使わなくても、どっちでも構いません。 名称だけ使うとかも大丈夫です。設定改変もご自由に。 ……そもそも、こんな設定を使ってくれる人がいないだろうけど。 「ゆっくりまんじゅう」 髪飾りを失くしたゆっくりのこと。 髪飾りが無くなったゆっくりは種として迫害される運命にある。特に仲間の死体から髪飾りを盗んだ者は絶対に許されない。 「ゆっくりまんじゅう」は、それでも生き残るために変化した突然変異型ゆっくり。 髪飾りを失くしただけでは変異しないが、他のゆっくりったいによって迫害されることで変異することがある。 身体能力や知能は通常のゆっくりを遥かに凌駕するが、それは体内餡子の糖分を使っているため。 故に、通常のゆっくりよりも寿命は短く、中の餡子も甘みがなくて不味い。 「ゆっくりするな!」などの「ゆっくり」という言葉に対して否定的な言葉をぶつける。 自分から他のゆっくりを襲うことはしないが、襲われたら相手がれみりゃであろうと、群れであろうと死ぬまで戦う。 子ゆっくりであろうと容赦せず、相手の餡子を食らうことも平気でする。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/492.html
どこまでも晴れ渡った青空のもと、広い草原の上。8匹のゆっくり達がゆっくりとした時間を過ごしている。 まだ小さい赤ちゃんゆっくりが6匹、成体の、おそらく赤ちゃんゆっくりの親であろうゆっくりが2匹いる。 赤ん坊は全て霊夢種のゆっくりで、両親の愛情をうけていままでゆっくりと暮らしてきたのだろう。 野生種にしては肌に張りがあり、髪も艶がある。要するにとても健康なのだ。 満面の笑みを浮かべながら、「ゆっ♪ゆっ♪ゆっくり~♪」と跳ねながら歌っている。 子供たちよりも二回り大きい霊夢種と、その霊夢種より少し大きい魔理沙種の両親がそれを見守っている。 見守る親ゆっくりの表情もとてもゆっくりとした良い表情だ。 両親の髪には、昨日我が子が自分達のためにと採ってきてくれたタンポポが刺さっている。 自分の子供たちがゆっくりとしたやさしい子供に育ってくれたことが、彼らにはうれしかった。 「れいむたちのこどもいいこだね!」 目を細めてゆっくり親霊夢が言う。 「まりさたちのこどもゆっくりだね!」 親魔理沙もうれしそうに言う。 両親ともにやはりとても健康だ。 そう、私の娯楽に付き合うのに彼らは完璧だ。 長い間ゆっくりの家族たちを見てきたが、彼らほどお互いのこと思いあっているゆっくりの家族はそういるものではない。 彼らを私の素敵なパーティーに招くためには第一印象が大事だ。 できるだけやさしい声で、彼らに話しかける。 「やあ、ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 種としての本能か、彼らはやはりゆっくりしていってね!!!と返してくる。 この反応で10日前にやった遊びを思い出す。 ふと、どんな状況でも「ゆっくりしていってね! 」と言えば「ゆっくりしていってね! 」と言い返してくれるのか実験してみた。 ゆっくりの足?かどうかはわからないが、底の部分をのこぎりでゆっくり切る。もちろんゆっくりは泣き叫ぶ。 「ゆっくりしていってね!」と言えば、 「つっづゆっづっりじていっべぇねぇ!!!」と、激痛の余りゆがめた口から、泣きながら「ゆっくりしていってね!」らしき言葉を話していた。 そのゆっくり霊夢は元の場所に帰してやったが、おそらくもう死んでいるだろう。 おっと、いかんな。今大事なのは目の前の彼らを私のパーティーに招くことだった。 「おじちゃんゆっくりできるひと?」 「おじさんゆっくりできるひとなの?」 おじさんかぁ…まあいい。私から溢れるダンディーな雰囲気から、お兄さんではいけないと考えたんだろう。 彼らが聞いてくる。驚いたことに、ゆっくりとだが私から距離をとり、まだ小さい子ども達の前に霊夢種と、なんとあの魔理沙種が立っている。 おそらく私が襲いかかってきたときに、子供たちを守り、子供たちを逃がすためだろう。 特に魔理沙種が子供たちを守ろうとする姿勢は私を感動させた。あの親兄弟子供さえ自分のためなら切り捨てる魔理沙種が! 彼らに会えたことを心の底から感謝しなければ!! 「うん、ゆっくりできる人だよ。ところでそこの君達、とてもきれいな髪飾りだね」 「「うんわたしたちのあかちゃんがくれたんだよ!!」」 「「「おかあさんたちにあげたんだよ」」」 親ゆっくりはうれしそうに、子供ゆっくりは誇らしげに私に向かってしゃべる。 髪飾りを褒めただけで警戒を解くところは、やはりゆっくりといったところか…。 「ところで君たち、ご飯を食べないかい? たくさん持っているんだけど一人で食べるには多いからね。一緒に食べよう」 「ゆっ!!ゆっくりちょうだい!」 「ゆっくりまってね!」 子供たちはうれしそうに駆け寄ろうとするが、親ゆっくり達に止められている。 彼らは少し疑わしそうにこちらを見ている。なるほど、毒を警戒しているのか? ゆっくりにしては賢い。相当修羅場をくぐりぬけてきたのだろうか? 「ははは、毒なんかはいってないから、心配せずに食べてごらん」 ニッコリ笑って風呂敷袋からおにぎりを取り出し咀嚼する、うんおいしい。やはりおにぎりの具は梅干しだ。 「うたがってごめんね!ゆっくりちょうだい!」 信用してくれたようだ、別の風呂敷袋からまた別のおにぎりを取り出す。具は特にない。 そしてなかには無味無臭の睡眠薬が入っている。 それを4個彼らに与える。 「うめぇ!めっちゃうめぇ!」 君達ね、君達の食べているおにぎりを私が食べたわけではないのになぜ毒がないと思うかな? まぁゆっくりだからしかたないか。 彼らが気に入ってくれたようでよかった。 人生最後の食事、いや饅生最後の食事なのだから、ゆっくり味わってほしいのだが、尋常ではないスピード食べている。 君達全然ゆっくりしてない、ちゃんと味わっているのか? すぐに彼らは食事を終えた。 親ゆっくりたちが子供の口に付いたご飯粒を取ってあげている、心温まる光景だ。 「おじちゃん!とってもおいちいよ!ありがとね!」 「おじさん!とってもおいしかったよ!ゆっくりしていってね!」 この家族に私は気に入ってもらったようだ、しばらく彼らと遊んだ。 遊ぶといっても、小さいゆっくりを持ち上げて立ってやるだけなのだが、いつもと違った景色にご満悦のようで、 「ゆっ!とってもたかいよ!」と喜んでくれる。 特におそらく末っ子の一番小さいゆっくりはこの遊びを気に入ったらしく、私の掌でとび跳ねながら 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 と喜んでくれている。 一番ちいさいのでちびゆっくりと呼んでもいいかと聞くと、 「ゆっ♪おじちゃん大好きだからいいよ」 といってくれた。かわいいゆっくりだ。 そうこうしているうちに薬が効いてきたのか、子供ゆっくりが眠そうだ。 「なんだかねむいね…」 それに気づいた親ゆっくり達は、家に帰ることにしたようだ。 「「おじさん!きょうはありがとね!ねむたいしきょうはおうちにかえるね!」」 親ゆっくりも少しは眠そうだ。体が大きい分薬の回りが遅いようだ。 このまま家に返してしまっては彼らをパーティーに呼ぶことができない。 「子供ゆっくりちゃん達も眠そうだし、そのまま帰るのは危ないよ。だからさ、今日は僕の家に来ないかい? 食事もあったかい寝床もあるし、気に入ってもらえるならそのまま君たちの家にしてもらってもいいよ」 「ゆっ!ほんと!」 「おじさんのうちにいくよ!ゆっくりつれてってね!」 すっかり私のことを信用してくれたようだ。 「うん、それじゃあちょっと狭いけどこの籠の中に入ってくれるかな? 家に着いたらたっぷりゆっくりさせてあげるよ」 ゆっくり達は何の疑いも持たずに籠の中に入っていく。 少しの間はゆっくりたちも私に話しかけてきた。 「ゆっくりできるおうちだったら!れいむたちのおうちだね!」 「とくべつにおじちゃんもすんでいいよ!」 しかし数分もすれば全て寝息になっていた。 私は鼻歌を歌いながら自分の家に向かう。 自宅につくと、地下室に用意したパーティー会場。 鉄製の箱で、蓋はしていない。ゆっくりたちが十分ゆっくりできるほどのスペースは無い。 そこに彼らを一匹一匹かごから出して置いていく。 あと数分もすれば目覚めるだろう。 それにしても良い寝顔だ。なんの心配もなくゆっくりとした表情で寝息を立てている。 親ゆっくり達を中心に、子供ゆっくり達が寄り添うようにして眠っている。 彼らは目を覚ませば、またゆっくりできると思っているのだろう。 「ゆっ~ん」 一匹起きたようだ。それにつられてかほかのゆっくりたちも起きてくる。 「ゆっくりねたね!」 「おはようおじちゃん!ゆっくりちていってね!」 「おうちについたね!ゆっくりするね!」 それぞれ思い思いのことを言いながら飛び跳ねている。 その彼らに、一匹一匹ポリタンクの中からうつしたバケツに入った、とある液体を刷毛でゆっくりの髪にぬりつける。 「ゆっゆ!きもちわるいよ!」 「なにこれ!つめたいよ!」 「こんなことしてゆっくりあやまってね!!」 「「はながよごれたよ!ゆっくりあやまってね!!」」 ゆっくりの両親が揃って抗議する。 鼻?普通髪を謎の液体まみれにされたことを怒らないのか?なぜに鼻? 鼻…はな…花…あっ!このゆっくり子供たちにもらった髪飾りが汚されたことを怒っているのか、 ふーん感動的だね。これからどうなるかも知らないで。 「ああ、ごめんね。君達に灯油を塗ったのはゆっくりするには大事なものだからなんだ」 「ゆっくりできるんだね!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 「とうゆでゆっくりできるの?!」 「はやくとうゆでゆっくりしたいよ!」 ゆっくり達にとってゆっくりできると言えば、大抵のことを信じてくれる。便利な言葉だ。 まぁちゃんとした器具を使ってしかるべき使い方をすれば、冬場は家の中でゆっくりできるものだ。私の言ったことはあながち嘘ではない。 さて、準備は整った。それじゃあパーティーの始まりだ。 とりあえずマッチを擦ってみる。シュッ 一度で火がつかない…。 シュッシュッシュボ やっとついた。ニッコリ笑顔で、自分に一番なついてくれたちびゆっくりを呼ぶ。 「いちばんちっちゃいゆっくりからゆっくりさせてあげるよ」 他のゆっくり達からは抗議の声があがったが、順番にゆっくりさせてあげるというと納得した。 飛ぶようにこっちに向かってちびゆっくりが跳ねてくる。 ご飯をくれた、自分と遊んでくれた優しいおじちゃんが、自分を一番にゆっくりさせてくれる。 そう考えたんだろう、満面の笑みで素早く足もとまで来た。 「それじゃあゆっくりさせてね!」 私もニコニコ顔で答える。 「その前に少しの間目を閉じていてね。ほかのゆっくりたちもだよ」 すべてのゆっくりが目を閉じている。どの顔もとてもゆっくりとしていて、これから起こるゆっくりに期待している。 それを確認した私は、ちびゆっくりにマッチの火を素早く近づけようとする。 「ゆっくりはなれろ!!!」 薄目を開けていたらしいゆっくり親魔理沙が、マッチに向ってタックルを仕掛けてくる。 少し驚いたが遅すぎる、止まって見える。マッチの火が素早くちびゆっくりを炙る。 それまで幸せだった人生が変わる瞬間、私はそれがたまらなく好きだ。 火がついた瞬間。 「ゆぎゅぎぃぃいぃ!!」 大声を出して地面を跳ねまわるちびゆっくり。 その絶叫と甘い物が焼ける匂いに、素早くほかのゆっくりたちも目を開け、惨劇に驚愕する。 ちびゆっくりは大声で泣き叫んでいる。無理もない、頭を火ダルマにされているのだ...もっとも顔だけしかないが。 ともかく体に火が付いているのだ、苦しくて当然だ。 ほかのゆっくりたちは、 「れ゛ぇぇむ゛れ゛ぇぇむ」 姉妹の名を叫ぶゆっくり、 「はやくけして!」 私に助けを求めるゆっくり、 「ひぃっ」 あまりの出来事に一瞬息をのみ、 「じぃじぃのぜいでゆっづぐりできないよ!じねぇぇ!」 その後怒りの声をあげるゆっくり。 じじいとは失礼な!!老け顔だが20代だぞ!!! おっと、怒りで我を失ってはいけない。 そうこうしている間に、子供をゆっくりの両親が助けに行ったぞ。 ふふ、あとは椅子に座って見てるだけだ。 「あづぃぃよ゛!!おがぁざぁん!!!!」 熱さにのたうちまわる火ダルマの子ゆっくりを見ても、ゆっくり親霊夢もゆっくり親魔理沙は、まだ助けることができると信じた。 「「すぐたすけるよ!!」」 何とか体当たりでも何でもして火を消すのだ。 二人を突き動かすのは、わが子を助けたいという気持ちだった。 ほかの姉妹たちと違って、生まれてすぐにゆっくりしていってね!を言わなかった我が子。 しばらくして 「ゆっくりしていってね!」 と言ってくれた時はどれだけ安心しただろう。 この娘たちの中で一番小さいゆっくり霊夢は、とても優しくて、ゆっくりとした良い子に育ってくれた。 この二匹の親ゆっくりがつけている髪飾りを取ってこようと最初に提案してくれたのは、今火ダルマで苦しんでいるこの子なのだ。 二人のゆっくりは灯油が塗られた体で火をけすため、飛びつこうとした。その時。 火の粉が舞ったそれは、ちびゆっくりのより近くにいたゆっくり魔理沙の、ちょうどあのタンポポでできた簡素な髪飾りに降り立つ瞬間、燃え始めた。 「ゆ゛っまりさ!かみとぼうしが!!」 ゆっくり魔理沙は驚愕した、なぜ自分はいきなり燃えたんだ、 しかし理由など考えている場合ではない、頭が燃え始めているのだ。 しかも燃えているのは自分の帽子なのだ。 「ゆ゛ッ!!!!」 ゆっくり達にとって、帽子やリボンは仲間の識別に使われる、ある意味命よりも大切なもの。 なければ自分のことを仲間だと認識してもらえず、食われたり、いじめ殺される。 ゆえにその大事なものをとることなどできるはずがない。ちびゆっくりのことも忘れて必死になって火を消そうと地面を転がる。 ゆっくりとは思えないかなりのスピードだ。 しかしその分火の粉が飛んでしまう。 近くにいた二匹の子供にも火の粉があたり、一瞬で火ダルマだ。 「あっづいぃ!!あっっづぃぃぃ!!!」 「ア゛ッつ゛ィぃぃィ゛」 いつもそそっかしいゆっくりが、 世話好きのゆっくりが火ダルマになって飛び跳ねている。 ゆっくり母霊夢の頭にはだんだん事態が飲み込めてきた。 自分たちはこの”とうゆ”という危険な液体をかけられていて、火がついたものの近くにいると発火してしまう。 そしてじぶんの嫁であるゆっくり魔理沙や子供たちは、火の粉をまき散らしながら飛び跳ねている最悪の状態だ。 涙を流しながら叫ぶ。 「ゆっくりはなれて!」 もう火がついた子供を助けることなどできない。 現に最初に燃やされたちびゆっくりはもう動いていない。 火が付いてしまった以上、彼女たちは自分のかわいい子どもから、恐ろしい殺戮者に変貌してしまったのだ。 本格的におもしろいことになってきた。どうやらあの親霊夢は、自分たちが非常に危険な状態にあるということを理解できたようだ。 ゆっくりとは思えないほど賢いな、やはりこの家族を選んで正解だった。 焼酎とつまみを楽しみながらゆっくりをいじめる。 最高の娯楽だ。みんなが火ダルマになってダンスパーティーを楽しんでいる。 数時間前までは、ゆっくりした時間を家族と一緒に過ごしていたのに。 ものの三分で、大事な家族は自分を殺す凶悪な兵器になってしまったんだ。 いま彼らはゆっくりの反対、ものすごくいそいでいるんだろう。 「いそいでにげてね!」 彼らに私なりの声援を送る。 子供の中では一番大きなゆっくり霊夢は、一番臆病なゆっくり霊夢を引きずるようにして、元姉妹から必死に逃げている。 「ゆっくり!いそいでね!」 「ゆゅくり!いぃいそぐよ!」 あまりの恐怖に、顔面蒼白で体中を震わせながら、姉に言葉を返すゆっくり霊夢。 後ろからは姉妹がすさまじい絶叫を上げながら飛び跳ねてくる。 「ア゛ッつ゛ィいダぁイ!!」 声からして、おそらくいつも自分を助けてくれた姉の声だろう。 一度湖に行った時、大きな蛙に食べられそうになったときなど、 カエルに豪快なタックルを決めて追い払ってくれた。 その大好きな姉が、今や火だるまになって追いかけてくる。 少し離れたところでは、完全に体に火が燃え移ったゆっくり魔理沙が絶叫しながら飛び跳ねている。 後ろにはもう姉が来ている。 追いつかれるそう思った瞬間、とっさに体が動いた。 自分をひっぱて逃がそうとしてくれた長女をつかんで、後ろから来る火の玉にぶつけていた。 「ア゛ッつ゛!!」 「ぎゃァぁあいぁ!!」 火の玉は粉々に崩れたが、新しい火の玉が飛び跳ねている。 必死になってにげながら、「ゆっぐりじだぁい!!」 と泣き叫ぶ。しかしできるはずもない、すぐについさっき自分が裏切った姉の火で、自分も火の玉になる。 「ははははは、傑作だねこれは。」 まさに因果応報だ。 悪いことは出来ないものだ、やはり清く正しく生きなければ。 それにしても、思ったよりゆっくりは力があるな。 自分よりだいぶ大きいゆっくりに噛み付いて投げ飛ばすとは。 単に火事場の馬鹿力だったのだろうか。 しかしこれで残りは親霊夢と子霊夢だけだ。 部屋の中心でぶるぶる震える子霊夢を、母霊夢が必死に守っている。 実に感動的だ、髪飾りが落ちているのも満身創痍といった感じで面白い。 まわりでは元家族たちが大きな声で歌いながら、火の衣装を身にまとって踊り狂っている。 この素晴らしいダンスパーティーも終盤だ。 一つ今回の主役達に最後に言ってやろう。 「さいごまでゆっくりこわがってね!!」 元家族たちが、自分達の周りを絶叫しながら飛び回っている。 最後に残った自分の子供が 「みんなでゆっくりしたっかたよ!」 と泣きながら目をつぶって呟いている。 少し前までは、みんなで一緒にゆっくりしていたのに。過去の楽しかった思い出が胸を締め付ける。 涙を流しながら親霊夢も 「みんなとゆっくりできないよ!」 と叫ぶ。めのまえに大きな火の玉が来る。 四方から聞こえる、声にならない声。 火の粉がついに、自分の体につく。すさまじい熱が一瞬で体を包む。すべての思考が切り裂かれ、痛みが体を支配する。 「ゆぎゅぅぅ!!!」 何も考えず飛び跳ねる。否、考えられない。 体を動かさずにはいられない。 あの草原で、子供たちとゆっくりと楽しむため飛び跳ねていたころとは違う、 痛みで飛び跳ねている。何かが体にぶつかって、そこにさらに痛みが走る。また一つ火の玉が増えた。 その五分後、残ったのは八つの炭化した饅頭と、 一輪のたんぽぽだけだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1014.html
「まりさぁ!ゆっくりうまれるよ!!」 「れいむ!!ゆっくりがんばってね!!」 「ゆっ、ゆっ、ゆー。ゆっ、ゆっ、ゆー」 「もうちょっとだよ!!がんばってね!!」 『ゆっ!』 「ゆー!!あかちゃん!!ゆっくりしていってね!!!」 『ゆっ!!!』 「まりさ・・れいむの・・・あかちゃんは?」 「すごくゆっくりしてるよ!!」 「よかった・・・ゆっくりしていってね!」 『ゆー!!!』 こうしてこの家族に新たな命が生まれた 産まれてきたのはれいむ種が一匹 まだ体もテニスボールほどで皮が安定してなくプルプル震えている 「あかちゃんれいむ!!まりさがおとーさんだよ!!」 『ゆっ!!』 「はじめましてのあいさつだよ!ほっぺたすりすりするよ!!」 『ゆゆっ!?』 「あかちゃんのほっぺたやわらかいよ~、ほっぺた~♪ふにふに~♪」 『ゆっ!?ゆゆっ!?』 「まりさばっかりずるいよ!!れいむもふにふにさせてね!!!」 「いいよれいむ!いっしょりすりすりしようね!!」 「ほんとだ~、すごくゆっくりしてるよ~♪すべすべ~♪」 『ゆっ!ゆっ!!ゆーん!!ゆーん!!』 「ゆっ!!あかちゃんがないちゃったよ!!」 「ごめんね!いたかったよね!?いっしょにゆっくりしようね!!」 「ほーら、どすからおしえてもらった”たかいたかい”だよ~」 『ゆっ!・・ゆっ!?・・ゆー♪ゆー♪』 「まりさ!!あかちゃんがわらってるよ!!」 「ゆゆっ!!さすがはどすじきでんの”たかいたかい”だね!!!」 こうして二人の初めての子育てが始まった 『ゆー!!ゆー!!』 「いたいの!?どこがいたいの!?」 『ゆーーん!!ゆーーん!!!』 「わがらないよぉぉぉ!!!まりざぁぁぁぁ!!どうじよぉぉぉ!!」 「ゆゆっ!?こんなときはぱちゅりーにおしえてもらった”あれ”をやるよ!!」 「「いたいの、いたいの、ゆっくりとんでけ~!!」」 目を離した隙に子供が蜂に刺された、と右往左往し 『ゆー・・・ゆー・・・』 「ゆっ!?くるしいの!?だいじょうぶ!?」 『ゆー・・・ゆ・・・』 「までぃざぁぁぁ!!あがじゃんがじんじゃうよぉぉぉ!!」 「だいじょうぶだよ!!ようせいさんにこおりをもらってきたよ!!」 突然熱を出した、と騒いではあちこち走り回ったり 「あかちゃーん!!どこー!!」 「ゆっくりでてきてねー!!」 「までぃざぁぁぁ!!どごにもいないよぉぉぉ!!」 「れいむ!!もっとおおきいこえでよぼうね!!」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 『ゆっ!!ゆー!!ゆー!!!』 「「みづがっでよがっだー!!!」」 自分の子供がいなくなった、と泣きじゃくっては一晩中森の中を探した そんな子育ても問題なくこなせる様になり、子供もサッカーボールほどに成長した 『ゆ~・・・ゆ~・・・』 「まりさ、あかちゃんもおおきくなったね」 「れいむ、もうあかちゃんじゃなくて、なまえでよんであげようね」 眠ってしまった子を二人寄り添いながら見守り語り合う 初めての子育てで上手くいくか心配だったが 群れの仲間の助けもあり子供は順調に成長していた 「まりさ、そろそろれーむもしゃべるころかな?」 「れいむ、あせらなくてもきっとしゃべれるようになるよ」 「そうだよね、ゆっくりまってるよ!」 そんなある日、家族で歌を歌っているときにその時が来た 「「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆゆっ♪ゆゆ~♪」」 『ゆ~♪ゆ~♪』 「「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆ~っくり~♪していってね~♪」」 『ゆ~♪ゆゆ~♪・・っきゅり~♪』 「ゆゆっ!?まりさ、もしかしてれーむがしゃべった?」 「れいむ、たしかめてみようか?」 「「ゆっくりしていってね!!!」」 『ゆっ、ゆっくち、ちていっちぇにぇ!』 「しゃべったー!!れーむがしゃべったよー!!!」 「れーむ!まりさのこと”おとーさん”ってよんでみて!!」 『ゆ~?ゆっくちちていっちぇにぇ!!』 「れーむ!れいむのことは”おかーさん”ってよぶんだよ!!」 『ゆっくち!!ゆっくち!!』 「れいむ、それはまだはやかったね」 「まりさ、でもうれじいよぉぉぉぉ!!!」 「「みんなでゆっくりしようね!!!」」 『ゆっくちちていっちぇにぇ!!!』 二人の子育てはまだまだ続く ~おわり~ この一家の幸せが長く続きますように -- 名無しさん (2012-12-24 17 37 28) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2475.html
「「ゆっくりしていってね!」」 ハッキリと、大きな声が畑の近くで聞こえた。声のする方へ近づいてみるとそれは二体の生き物だった。 畑の脇の道にいた二体は人語を話してはいるがどうみても人間やオウムの類ではなかった。 二体に共通する特徴は、バスケットボールほどの大きさの饅頭であるということだろう。 饅頭が生物なのが矛盾しているが、そうとしか言いようのない形であり、また中身も餡子なのでこれが適切だと思う。 左の方の饅頭は、黒のとんがり帽子と長い金髪を持ち、右の方は赤を基調としたリボンを付けていた。 私たちは彼女たちの総称を便宜上、「ゆっくり種」と呼んでいる。由来は先ほどの挨拶だ。 そしてこの二体はそのゆっくりの中でもポピュラーな種類である。左が「まりさ」で右が「れいむ」だ。 自分たちでそう名乗っている以上そうなのだろう。 「やあこんにちは。ゆっくりしてるよ。君たちもゆっくりしてるかい?」 「「ゆっくりしてるよ!!!」」 元気そうに跳ねる二体。私は持ってきたチョコを彼らにプレゼントした。ゆっくりは総じて甘い物が大好きなのだ。 「「ゆー!ゆっくりたべるよ!・・・ゆっくりー!」」 嬉しそうに頬張る二体。するとどこからか別のゆっくりがやってきた。 「チーンポ!」 「とかいはなありすとゆっくりしていってね!!!」 「うー♪うー♪おやつー!」 チョコの匂いに釣られてやってきたのは、みょん、ありす、れみりゃの三体だった。 れみりゃは他のゆっくりと違い人の体に近い体格をしている。 周りに幽霊のような物が浮かんでいるのがみょん。金髪にカチューシャを付けているのがありすだ。 「君達の分もあるよ。はいどうぞ。」 そういって残っていたチョコを渡した。これ以上増えたら流石に足りなかったが増えなかったので安心した。 食後、彼女たちは近くの野原に移動して遊んでいた。 ありすは、花を千切って髪飾りを作っているようだ。細かい作業を口でこなせるのが不思議である。 みょんとまりさは斜面を転がったり登ったりしていた。生首が転がっているようで、結構不気味でもあるが 本人たちの顔は幸せそうである。 れいむはれみりゃに抱っこされながら空を飛んでいた。 「ゆー、おそらをとんでるみたいー!」と楽しそうにしていた。 近くの森には結構な数のゆっくりが居るようだが、たいして問題にはなっていなかった。 別に作物を荒らすわけでもなく、森の食べ物を食いつくこともなく、何故か野生動物にいっさい襲われない彼女たちを 無下に扱う村人はいなかった。 それどころか、彼女たちは畑の雑草を刈ったり、老人の話相手や子供たちと遊んでいたりと、友好的な関係を築いていた。 私も初めてみた時から彼女らの虜になっていた。語彙こそ少ないが、彼らは的確に自らの思いを口にし、 仲間同士で仲良くしている姿は愛らしい子供のようだった。 夕方すぎになり私も家に帰ることにした。 「「ゆっくりさようならだね!!!」」 れいむとまりさ達はそういって森へ帰って行った。私も夕食のメニューを考えながら帰路についた。 それが彼女たちとの最後の会話だとも知らずに。 夜の森、そのど真ん中でゆっくり達は寝ていた。数は数十匹ほどだろうか。 毛布代わりに葉っぱをかけているだけで全く無防備である。 だが彼女たちは他の生き物に襲われることはない。正確に言えば、見た目と違い襲ってくる野生動物を撃退できる程度の力を有しているからだ。 しかしそんな彼女たちにも魔の手が迫っていた。その手は彼女たちを掴むと、そのまま袋に入れていった。 そうして全員を入れ終えた後、その人影はどこかへ消え去っていった。 郊外にひっそりと建てられたとある施設。そこはとある会社の倉庫だった。 元々は別な目的で作られたようであるが、紆余曲折あって今はとある金持ちの所有物となっていた。 そこへ先ほどのゆっくり達が運ばれてきた。彼女たちは数ある倉庫の一つへ連れてこられると、そこへ無造作に放り込まれた。 流石に振動で目を覚ましたようで、彼女たちはキョロキョロと辺りを見回していた。 そこへ何人かの若者が入ってきた。 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 そう言ってその男たちはポヨンポヨンと近づくゆっくり達。男たちはそのうちの二体を掴みあげた。 「ゆ?ゆっくりもちあげられたよ!」 どうやら抱きかかえられたと思ったらしい。れいむは喜んでいた。 掴みあげた男は、れいむを観察するとそのまま床に叩きつけた。 ベチィ!っと床に叩きつけられたれいむは、何が起きたのかわからずただただ、泣き続けていた。 「ゆー!ゆっくりできないよ!ゆっくりいたむよ!」 「「「「ひどいことはゆっくりやめてね!!!」」」」 他のゆっくり達から抗議の大合唱を受けたが、特に気にせず男たちは話していた。 「饅頭のくせに潰れないのはおかしいだろ。常識的に考えて・・・」 「ていうかこいつら生き物なら、どうやって個体を増やしてるんだ?生殖器なんぞ見当たらないが」 「そもそも食った物はどこへ行ったんだ?」 「ていうか甘いものが好きなら、共食いしそうだぞ。饅頭だし。」 「とりあえず実験してみようぜ。なにせ数は多いんだ。気を使わなくて済む。」 男たちはそれぞれの実験のためにゆっくり達をそれぞれ連れて行った。 ある男はゆっくりの繁殖について実験していた。当初は分裂でもするかと思ったが流石にそれはないと判断した。 しかし体のどこにも繁殖に使われそうな物はなかった。仕方がないので体を無理やり触れさせてみた。 「いたいよ!ゆっくりやめてね!」 「ありすもいたいわ!ゆっくりやめてね!」 男の手でゴシゴシと二人はすり合わされていた。まりさの後ろからありすを押し続けていた。 かれこれ30分は経過した。一向に変化はない (やはり他の動物みたいな生殖器はないのか・・・隠れてる説も考えてみたが無駄だったようだな。) 男は諦めて次の実験をしようとした瞬間、突如、ありすから男性器に似た物が文字通り生えてきた。 「ゆー!なにこれ?わからないわ!」 まりさの方を見てみると何か穴が開いていた。どちらも先ほどまではなかったものだ。もしやと思い無理やりそこへねじ込んでみた。 「ゆー!ゆっくりできない!ゆっくりさせて!」 「ゆ!ゆ!・・・ゆっくりー!」 入れてすぐにありすは絶頂に達したようだ。 しかしそれだけで何も起きなかった。しかし男の眼は輝いていた。 (妊娠はしなかったが・・・生殖活動を行える事がわかっただけでも大きな進歩だ。次は妊娠の方法だな。) 男は今の出来事を記すためにパソコンに向かい合った。 別な男はゆっくりの食事について調べていた。基本雑食であるが、特に甘い物が大好きなのがゆっくりである。 ならば辛い物はどうなのだろうか。甘党な連中のことだ。辛さは苦手だろう。 ためしに一匹のちぇんにキムチを食べさせてみた。 「からいんだよーたべれないよー!」 予想通り苦手なようだ。しかし大した変化もなく、男はつまらなそうな顔をした。 (せめて辛さにのたうち回って死ぬとかしたら面白いのにな) そう思いながらもう一回キムチを食べさせてみた。すると 「からいよー!ゆっくりできないよー!たすけてー!」 そういって暴れ出した。手から落ちたちぇんがそのままのたうち回って死んでしまった。その顔はまるで窒息死でもしたかのような顔だった。 先ほどまではただ嫌がってただけなのに何故・・・考えてもわからないのでとりあえず別な実験をすることにした。 甘いもの好きなら共食いはするのだろうか。 手始めに適当なゆっくりをテーブルに置いた。まりさだった。 「ゆっくりしていってね!!!」 純粋無垢な目をこちらに向けていた。 俺はそのまりさをいったん放置して、近くのれみりゃを抱きかかえて椅子に戻った。 「う~♪だっこー!」 嬉しそうにこちらにひっつくれみりゃ。俺はそのれみりゃに対して 「お腹すいてる?甘いのでも食べる?」 と聞いた。すぐさま 「うー!たべるー!」と返事をしたので、れみりゃは床に下ろしてテーブルの上のまりさを持った。 「あーんして。ただし眼は瞑るんだよ。」 「うーーーーーん」 大きく口を開けたれみりゃの口の中にまりさを入れる。そして 「はいとじる。」 グシャっという音が響き渡った。どうやらまりさは即死のようだ。断末魔さえあげなかった。 「うー!おやつ・・・うー!まりさがくちにいるー!どうしてー?」 どうやら事態を把握できてないようだ。まあそれならそれでいい。 餡子の味を覚えたなら、おそらく他のゆっくりも遠慮なく食える気がする。いやまあ普通に考えれば仲間を自発的に食ったりはしないだろうが なのでこれは俺の希望にしかすぎないのだが。 「れみりゃ?饅頭はおいしかったかい?」 「うー!おいしかったー!」 「そうか。ならあそこにいる饅頭も食べていいよ。」 さあどうでる。多分食わないだろうが、個人的には食べた方が面白い。 「うー・・・・?」 迷っているのか、それとも何も考えてないのか。表情からはいまいち読み取れない。だが次の瞬間 「うー!おやつたべるー!」 近くにいたれいむを掴んでかじった。 「ゆっくりやめてねれみりゃ!ゆっくりできないから!」 れいむの訴えもむなしく食べられてしまった。 結局このゆっくり達はれみりゃに全員食べられてしまった。しかしなんでこいつらは逃げなかったのだろうか。 結局この倉庫では全滅するまで若者たちは思い思いの実験を楽しんだ。そのあとも若者たちは実験を繰り返し それらをブログ等で発表。たちまち話題となり、全員捕まった。森への不法侵入である。 そしてその発表がネットで広まると、ゆっくりに対して様々な情報が飛び交った ゆっくりは野生動物と同じくゴミ箱を荒らすだの ゆっくりの排泄物も餡子だの ゆっくりは植物のように繁殖するだの 車に似た物に乗って高速道路で100kmを出しただの。 優しそうに見えて実は口が悪いだの 根拠のない情報が飛び交った。しかしその情報は数日後に現実になった。 それから数年後、今はゆっくりは害獣の代名詞のような扱いだった。 畑を荒らし、ゴミ箱をあさり、他人の家にかってに住み込んでおうち宣言を行い あげく住人には暴言を吐く。なまじ知能と言葉を持ってるが故にそこいらの動物などとは 比べ物にならないほどタチが悪かった。 私はそんな状況を哀しんでいた。どうしてゆっくりはこうなったのか。ふと一軒家を覗いてみると、そこにはれいむとまりさ そしてその子供たちが数体居た。彼らは住人であろう男に向かって 「ここはれいむたちのおうちだよ!ゆっくりできないおにーさんはでていってね!!!」 「おやつをもってくるならいるのをゆるしてあげるんだぜ!!!」 男はため息をつくと、傍に居た犬の首輪をはずした。 「食べていいぞ。」 すぐさま犬はゆっくり達に襲いかかった。まずはまりさの帽子が奪われた。 「なにするんだぜ!ゆっくりできないばかいぬはとっといぎゃああああああああああ!!!」 頭から噛まれたまりさは、そのまま二三回地面に叩きつけられた。金髪の髪が餡子で汚れていた。 「やべるんだぜぐぞいぬ!!!!ぐぞじじい゛ぼびでないでどっどどだづげろ゛お゛お゛お゛!!!」 「まりさ!しっかりしてね!いまたすけるよ!」 「おとーしゃんいまたちゅけるよ!」 他の家族が必死に犬へ体当たりをする。しかし効果は全くない。 そうこうしてるうちに子供まりさの一匹が「そろーり、そろーり」と言いながら庭から出て行こうとしていた。 しかしそれに気付いた親れいむが止めようとする。 「どうじでがぞぐをみづででに゛げよ゛う゛どじでるのお゛お゛お゛!!!」 「うるちゃいんだぜ!まぬけなおとーさんがわるいんだぜ!」 そういって逃げようとしたまりさ。しかし何者かに上から押さえつけられてそれは失敗に終わった。 「ゆ?・・・れ、れみりゃだああああああああああ!!!!ばりざはおいじくないィ!」 命乞いをする暇もなく、半分にされたまりさ。それを美味しそうに食べるれみりゃ。 口の周りを汚しながら 「う~♪あまあまおいしいどぉ~♪おぜうさまにはえれがんとなちょうしょくがひつようだどぉ~♪」 そう言いながら次々とゆっくりを食していった。 「でびりゃはゆっぐじできないいいいいいい!!!!」 「ばりざをだづげるんだぜええええ!!!!」 「でいぶをゆっぐじざぜないおぎゃーじゃんだぢはじねええええええええ!!!!」 別のところでは学校の花壇の花を食している家族が居た 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 「ときゃいはおはなさんね!ありちゅがゆっきゅりたべちゃあげるわ!」 そこへ学生達が近づいた。 「ヒャッハー!虐待だー!」 そのあとは見てない。 今ではよく見られる光景であった。 私はとある大学へ来た。そこには世界でも有名なゆっくり研究の第一人者がいる。彼の発見とやらを取材しに来たのだ。 研究室へ入ると初老の男が出迎えてくれた。 挨拶もそこそこに、私は今回の発見を聞くことにした。大学時代の恩師の友人である彼は、未だ発表されてない発見を 私だけに教えてくれるそうだ。しばらくは記事にしないという条件だが。 「これを見て下さい。」 男が指をさした方には、二つのケースがあった。そこには二体のれいむがそれぞれ入れられていた。 「右は野生のゆっくりを捕まえたものです。左は研究所で外には一切触れずに育てたものです。左と会話してみてください。」 右のれいむはこちらに気づくと 「ゆ!れいむはおなかすいたよ!ばかなじじいはとっととごはんをもってきてね!!!」 と言ってきた。対して左はと言うと。 「ゆっくりしていってね!!!」 今では滅多に聞けない、あの挨拶をしてきた。だがそれだけである。 「しかしこれが何か?挨拶だけなら、ブリーダーの育てたゆっくりなら・・・」 「では、ちょっと中身を見てみましょうか。」 そういって教授は左のれいむの顔を少し引きちぎった。」 「ゆ!はかったねおじーさん!」などと言いながら引きちぎられたれいむ。私は餡子が漏れるとばかり思っていたが 傷口からは何も起きなかった。 「よく見てください。」 私は傷口をみた。そこには餡子はおろか何もなかった。ただ白いだけだった。 なんだこれは?全く訳がわからない。どうして餡子がないのだ。 「隣へいきましょう。」 そういって教授は左のれいむだけをケースから取り出し。隣の部屋へ向かって言った。 右のれいむは「はやくここからだせ!ださないとれいむがゆっくりできなくさせるよ!!!」と言っていた。 そこは今まで見たこともないゆっくりだらけだった。 いやれいむやまりさは見たことがある。 しかし私の知っている彼女たちではなかった。 まりさは滑るように移動しながら院生に餃子を無理やり食べさせていた。れいむはひたすら何かを運んでいた。 れみりゃは「うー!」と言いながら手から何やら不思議な弾を出し、きめえ丸はもはやなんだかわからない生き物になっていた。 「どうですか?ついでにあのまりさとれいむは銃弾でもビクともしませんよ」」 「どうですかと言われても・・・このゆっくり達は一体?」 「元は野生の赤ゆっくりでしたよみんな。育て方も普通の育て方をしたまでです。ただしちょっとした事をしましたが」 「ちょっとした事?」 「正確には思っただけですね。たとえばあのれいむ。世話をする人間は、あのれいむと接する時必ず、『これは理解不能の不思議生物だ』 と思いながら接するように命じました。」 「思う・・・ってホントに思っただけですか?」 思わず聞き返した。 「ええ。そうやって何回か試したうちに一つわかりました。・・・おそらくゆっくりは人間の望みどおりに変化するのではないかと。」 「へ・・・変化ですか?」 「例えば、『このれいむは1m上から落ちただけで死ぬ』と思いながら育てるとしましょう。世間一般で普通と言われているれいむならば 1mからでは死にません。しかしそう思いながら育てていったれいむは、本当に1m上から落とされただけで死ぬんですよ。 これなら、未だにゆっくりの生態に関する情報が乱立してる事も説明がつきます。人の『こうなってほしい』という思いに 影響を受けるのならば、一人一人違うゆっくりが生まれるのですから。口の悪くて脆弱なゆっくりも、礼儀正しいゆっくりも その人しだいということでしょう。」 教授の言ってることは最早あらゆる法則から外れていた。しかしそう言われるとそうかも知れない。 「今の世間の一般認識はゆっくり=害獣という認識が強いです。おそらくそれによって大多数のゆっくりがあのようなのになったのでしょう。 思い込みしだいでは饅頭ですらなくなると言うのに。」 ふと数年前の記憶が蘇った。あの頃の私はゆっくりが饅頭であり、生物であり、甘い物が大好きだと思っていた。 いや、思っていたからこそそうなったのか。 「ここに来た記念にこれを差し上げましょう。」 帰り際、そういって教授から箱を手渡された。中を覗いてみると、小さなれいむとまりさが眠っていた。 スヤスヤと寝息を立てている姿は可愛らしかった。 「貴方も体験してみるといい。彼女たちがどういう風になるかは、貴方しだいなのですから。」 そういって教授は研究室へ戻っていった。 私は箱を見ながら、あの野原の事を思い出した。 ふと、二人が目を覚ましたのがわかった。私はこういった。 「ゆっくりしていってね!!!」 【あとがき】 色々とアレな設定ですが。まあ適当に読んでください byバスケの人 過去作 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3 お兄さんとドスれいむ 鬼意屋敷殺人事件 どすの加工所 幻想樹の迷宮 幻想樹の迷宮Ⅱ 徹夜でゆっくりしようぜ! 徹夜でゆっくりしようぜ!2 地震 ゆーうーかい ゆーうーかい 解決編 ゆーうーかい番外編 ~ゆっくりプレイス~ ゆっくりパニック れみりゃをむーしゃむしゃー 帽子のないれみりゃ ゆっくりプレイスを求めて 水上レース このSSに感想を付ける